ハラがコレなんで
これは、石井裕也監督、仲里依紗主演の人情コメディ。
妊娠９ヶ月目の原光子は、アパートでひとり暮らし中。アメリカ人であるお腹の子の父親には逃げられ、仕事はなく、所持金も底をついた。家賃も払えなくなり、アパートを引き払った光子だが、別に気にする様子もない。
「今は辛くとも、じっと我慢して、風向きが変わったら、そん時にドーンと行けばいいんだから」と、公園で昼寝を決め込んでいると・・・風向きが変わった。
光子は、風に吹かれるままにタクシーを走らせ、そして、時代に取り残されたような古い長屋に辿り着く・・・
義理人情を重んじ、心意気を見せる事を「粋」と呼んで尊ぶ、時代外れの江戸っ子のような光子の人間性のズレ具合を笑うコメディかと思って観始めましたが、監督の立場は、どうやら光子寄り。
まぁ、“風任せ”の人生観は問題あるような気がするけれど・・・「あたし、アンタに迷惑かけるよ。でも、アンタの迷惑は全部あたしが受け止めてあげる」と言葉に込められた、お互いに助け合って生きて行くことの大切さ。そして、話を親身になって聞いて共に涙を流してくれる人がいる、それが辛い局面を乗り越えるためには必要であると言う事。
そうやって、困り事も、痛みも、共有し助け合う事こそが、この現代社会に欠けている事だ、と、この映画は光子ばりのお節介で押し付けて来ます。
「人生に勝ち負けなんかない。みんなで力合わせてがんばって、それでいいじゃねぇかよ」と。
これ、中途半端なら煩わしくもあるけれど、押し付けも、ここまで徹底すると気持ちいい。
そして終盤は、登場人物の大半が一同に会する怒濤のクライマックス。
この畳み掛けと勢いは凄まじく、スラップスティックコメディとしては圧巻の出来栄えで、もう爆笑に次ぐ爆笑。
登場人物、みんな必死なまでに真面目なんですけど、それが笑える・・・コイツは傑作、大傑作。
そのクライマックスの舞台となるのはなんと福島。
撮影は、震災前に終わっていたそうですが、光子が口癖のように繰り返す「ＯＫ、何とかなる。大丈夫だから」の言葉が、今、一番必要な場所が舞台となったのは・・・これも何かの縁なのかなぁ・・・
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
石井裕也
■出演
原光子 ・・・ 仲里依紗
（その他のキャスト）
中村蒼 稲川実代 並樹史朗 竹内都子 大野百花
鈴木励和 斎藤水生 近藤芳正 螢雪次朗 大石吾朗
瀧川鯉昇 戸次重幸 森岡龍 目黒真希 斉藤慶子 石橋凌
■コピー
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