僕たちは世界を変えることができない。
Ｂｕｔ，ｗｅ　ｗａｎｎａ　ｂｕｉｌｄ　ａ　ｓｃｈｏｏｌ　ｉｎ　Ｃａｍｂｏｄｉａ．

　これは、医大生であった葉田甲太が、資金を集め、カンボジアに小学校を建てるまでを綴った奮闘記「僕たちは世界を変えることが出来ない」を映画化したもの。
　監督は深作健太。主演には、この映画が初主演となる向井理がキャスティングされました。

　大学に通い、バイトして、時にはコンパ・・・医大２年生の田中甲太の毎日は正に可もなく不可もなく。不満はないけど、何か物足りないものだった。
　そんなある日、甲太は郵便局で海外支援案内のパンフレットを手にする。そこには「１５０万円の寄付でカンボジアに小学校が建てられる」とあった。
　これだ！と思った甲太は、仲間を集めて、学生ボランディアサークル“そらまめプロジェクト”を立ち上げるのだが・・・

　この映画、物語自体は悪くないと思います。
　平凡な若者が、ふとしたきっかけで動き出し、途中挫折もしかけるのだけど、思っていた事を成し遂げ、そして、その事が、自分を変えて行く・・・と言う物語、正に青春映画の王道を行くもの。
　上手く作ってくれればハマるタイプの話なので期待していたのだけど、この映画、どうも乗れないのです。

　その最大の理由は、主演の向井理にあります。
　甲太は、一浪した大学２年生だから２１歳。これを２９歳になる向井理が演るのは少々無理があります。特に他のキャストは、役年齢と同じか、それ以下の若い俳優たちばかりで無理なく演じているのと差が出てしまうし、年齢とキャリアがある分、「お兄さん」感が出てしまうのです。
　それに、甲太の「モテない」設定は、演じるのが向井理では破綻してます。医大に通う秀才で、あのルックスなら「女の子素通り」はあり得ないでしょう。あまりに不自然です。
　大体、向井理と言う男、何をやってもスマートにこなしてしまいそうで、不器用に立ち回るイメージがないんです。その向井理を、甲太と言う役に強引にキャストした時点で、この映画、どうしようもなく不自然なものになってしまいました。
　
　また、深作健太、クライマックスに何か事件を描きたかったのでしょうか、甲太が切り株を掘り起こそうとする描写を入れましたが、これが半ば意味不明。
　まぁ、狙いは判らなくもないのですが・・・

　確かに、物語としては悪くないし、向井理も初主演の意気込みに加え、個人的な思い入れがあって熱くなっているのも判ります。
　それだからこそ、甲太にはもっと相応しい役がいたはずですし、向井理を主演にするなら、物語の脚色も必要だったでしょう。
　題材もいいし、製作者の熱意も感じるが故に、このチグハグな出来映えをどうにかして欲しいと言うもどかしさを感じる映画でした。
　　

　（月日　にて）

（作品データ）

　■監督

深作健太　

　■出演

　田中甲太　・・・　向井理

　本田充　　・・・　松坂桃李

（その他のキャスト）
　柄本佑　　窪田正孝　　村川絵梨　　黒川芽以　　江口のりこ
　黄川田将也　　リリー・フランキ−　　阿部寛

　■コピー

だから、みんなで学校を作った。

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