モールス
Ｌｅｔ ｍｅ ｉｎ
これは、スウェーデン映画「ぼくのエリ ２００歳の少女」のハリウッド版リメイク。
「キック・アス」の“ヒット・ガール”で注目のクロエ・グレース・モレッツが主演と言う事でも話題のロマンチック・スリラーです。
映画の舞台は、雪に閉ざされた田舎町。
母親と２人で暮らす１２歳の少年、オーウェン。内気で、華奢な体格のオーウェンは学校では「女の子」と、いじめられてひとりぼっち。離婚調停中で精神的に不安定な母親との息詰まるような家庭にも居場所がなく、古い団地の中庭でひとり過ごしていた。
そんなある日、隣の部屋に引っ越してきた同い年の少女アビーが、中庭に現れる。次第に心を通わせていく２人だったが・・・
ネタバレになってしまいますが、この映画、主役のアビーはヴァンパイヤ。
外見は１２歳の少女ですが、その姿のままで長い長い時間を生きて来たモンスターなのです。
そして、これは美しくも残酷な映画。また、様々な見方の出来る映画です。
これを、孤独な少年と少女の純愛と見る人もいるでしょう。
でも、見方を変え、アビーの側から見れば、それは少女の恋であるわけがない。
オーウェンがアビーの「お父さん」だと思っていた初老の男性こそ、数十年後のオーウェンの姿。アビーはそうやって協力者を得て、長い時間を生きて来たのです。
そう、アビーは、孤独な心に忍び込む。
現題の「Ｌｅｔ ｍｅ ｉｎ」（入っていい？）は、正に、孤独な心に忍び込む、この世のものでないささやき。
これに対するオーウェンの葛藤がきちんと描かれているのは、やはりキリスト教文化圏ならでは、と言うことでしょうか。
ここが、この映画が「ホラー映画」であることの最大の山場。
そして、彼女を受け入れ、共に生きて行くことを選ぶ、と言う、オーウェンの選択。
それは、人の道に外れた事で、オーウェンの行く先には流血と死が待っています。主人公が、こうした選択をするドラマを描いてしまう、と言うのは、ある意味で、勇気が必要だったのではないでしょうか？
惜しいと思ったのはヴァンパイヤの造形と演出。何処かで見たような化け物となってしまっていたのには不満でした。
性別も年齢も超越した存在であるヴァンパイヤ、その正体と吸血のシーンには、少年を外道の道に歩ませるに足りる、妖しい魅力が欲しかったように思うのです。
（８月１３日 ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）
（作品データ）
■監督
マット・リーヴス
■出演
アビー ・・・ クロエ・グレイス・モレッツ
オーウェン ・・・ コディ・スミット=マクフィー
（その他のキャスト）
リチャード・ジェンキンス イライアス・コティーズ
■コピー
最も切なくて、最も怖ろしい、イノセントスリラー
■Ｌｉｎｋ
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