軽蔑
これは、中上健次の同題小説を映画化したもの。
主演は、高良健吾と鈴木杏。
歌舞伎町で生きるチンピラのカズ。
地方の名家の跡取り息子でありながら、何の仕事をやっても長続きせず、かと言って、ヤクザにもなりきれない、そんな男だ。
賭博で６００万の借金を抱えた彼は、兄貴分から、借金をチャラにするのと引換えにシマにあるバーを襲撃するよう命じられた。
そこは、カズが恋焦がれるポールダンサーの真知子の踊る店。混乱に乗じて真知子を連れ出したカズは、彼の故郷へと向かうが・・・
この映画での高良と鈴木の熱演は前評判通り。
特に、カズを演じた高良健吾は文句なしです。
ただ、真知子を演じた鈴木杏が・・・確かに、熱演だとは思います。優等生子役のイメージを捨てて、ベッドシーンを含む今までない演技に、正に体当たりで臨んだのも判ります。それでも、鈴木杏では、“歌舞伎町Ｎｏ．１のダンサー”に見えません。
冒頭のポールダンスも、周りのプロに対してはっきりと見劣りして、可哀想なほど。
結局、育ちのよさが佇まいに出てしまうのです。きちんと身なりを整えれば、正にいいとこのお嬢さんで、それこそ、カズの実家のような地方の名家の望む、文句のない嫁に見えてしまいます。水商売の女の持つ、退廃的な空気を出せていない。
この役、沢尻エリカが演ればビジュアル的にはいい感じだったのではないでしょうか？
物語の中心は、愚かさ故に行き場をなくしたチンピラと、そんな彼の純粋さに触れ、ただ愛そうと決めたダンサーとの逃避行。
それにしても、舞台を現代に持って来ると、この設定は何とも違和感と言うか、浮いた感じを覚えます。
（映画内の鈴木杏の台詞ではないですが、「それ、何処の星の話？」と言う感じ）
だから、彼らが何に追い詰められたのか見えて来ないし、追い詰められたの彼らにも切迫感がありません。
愛する事がこれほどまでに苦しく、身を焦がす痛みにのたうち回るようなものであるのか・・・原作の持っていたヒリヒリするような感触を出せなかったが惜しい。
確かに、主演２人の熱演は判りますが、ただ、原作をなぞって綺麗にまとめただけのように思えてしまいました。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
廣木隆一
■出演
カズ ・・・ 高良健吾
真知子 ・・・ 鈴木杏
（その他のキャスト）
大森南朋 忍成修吾 村上淳 根 小林ユウキチ 日向寺雅人
蕨野友也 根岸季子 田口トモロヲ 蒼井そら 山田キヌヲ 原田裕章
淵上泰史 緑魔子 小林薫
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世界は二人を、愛さなかった。
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