星守る犬

　これは、「泣ける」と評判の村上たかしのマンガを映画化したもの。
　全てを失った男と、彼に寄り添った犬の物語です。

　北海道のキャンプ場近くの林で、停めてあった車の中から、白骨化した中年男性と死んで間もない犬の遺体が発見された。
　市役所に勤める奥津は、身元の判らないその男と犬に興味を抱き、残された僅かな手懸りから、彼らの足跡を辿って東京へと向かうが・・・

　この映画、泣けると言うよりは、むしろ「痛い｣映画ではないでしょうか？
　心臓を病んで仕事を失い、病のせいで再就職先もなく、女房・子供は愛想尽かして出て行った。
　そんな追い詰められた男が、残された僅かな現金と家財道具をクルマに積み込み、売り払いながら何となく北を目指し、ガソリンと、金が尽きた所で終末を迎える・・・
　映画は、奥津の視線で、その最後の旅路を追い、再現ドラマを交えて掘り下げていきます。
　そして、男と犬の旅路の過程で触れ合った人たちの心を拾い上げていくのですが、この辺り、あまり強い印象を与えるものがなく、さらっと流されてしまった印象。
　また、震災前の東北の風景が映し出されているのも貴重とは思うのですが、これも活かされているように思えないのが惜しい。
　そして、どうにも納得出来なかったのは、男とその家族が、我が侭で意固地、そして身勝手なこと。
　犬を欲しがったのに、すぐに飽きて放り出した男の娘に始まり、我が侭と融通の利かなさで仕事を失った男、そしてお互いに譲らずに崩壊した家庭・・・そんな家庭に飼われたハッピーは、人間の我が侭さに振り回され、そして、行先に死だけが待つ旅路への道連れにされてしまうのです。

　人間が我が侭だからこそ、ひたむきで、健気なハッピーの姿が胸を打ちます。
　その意味では確かに「泣ける」かも知れませんが・・・最後の最後、やはり人間の理不尽な仕打ちで死を迎える・・・いや、「殺された」とはっきり書くべきでしょう。
　こんなことに犬を巻き込むな、と愛犬家ならずとも嘆きたくなるような展開で、終盤、観ていられずに席を立つ人が相次いだのにも納得しました。

　（月日　にて）

（作品データ）

　■監督

瀧本智行　

　■出演

　男　・・・　西田敏行

　奥津　・・・　玉山鉄二

（その他のキャスト）
　川島海荷　　余貴美子　　温水洋一　　濱田マリ　　塩見三省　　中村獅童　　岸本加世子
　でんでん　　藤原大吉　　八木昌子　　阿南敦子　　山崎樹範　　永倉大輔　　猪野学
　宮本大誠　　柳英里紗　　藤竜也　　三浦友和

　■コピー

望みつづけるその先に、きっと希望があると思う。 　

　■Ｌｉｎｋ

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