ドリーム・ホーム
ｄｒｅａｍＨｏｍｅ
これは、香港映画界の鬼才、パン・ホーチョン監督の新作。
これまで公開された各国の映画祭で話題となったバイオレンス映画です。
香港。ビクトリア湾を望む湾岸の高級マンションにある夜、何者かが侵入。警備員を拘束バンドで絞殺した。
これは、これから始まる惨劇の幕開けに過ぎなかった。
一方、銀行に勤めるＯＬのチャンは行き詰まっていた。
彼女の夢は海の見える家を手に入れること。その為には、銀行の顧客名簿をも売り、夜も副業して働いて必死に稼いで来た。
でも、交際相手は妻子持ち、病気の父の手術は保険も利かず・・・さらに、マンション購入費用が値上がりして５０％増しになると聞いた彼女は・・・
これは「事実に基づく」とあるけれど、こうした事件が実際に起きた訳ではなく、「事実」とは常軌を逸していた一時期の香港の住宅事情にあるそうです。（実際、パン・ホーチョン監督自身、マンションが買えなかったのだとか）
社会が常軌を逸しているのなら、人間も常軌を逸するしかない、と言うのがこの映画のテーマでしょう。
１１人の人間がむごたらしく殺される（しかも、様々に趣向を凝らして・・・）スプラッター描写に注目が集まる本作ですが、チェンのマンション購入に向けての努力、家を買う事への幼少時期からの描写を、殺人描写と平行して描き、マンション購入の為、徐
々に人の道を踏み外して行く様と、殺人の連続の中で被害者の逆襲によりチェンが傷ついて行く様を重ね合わせたりする辺りの描写は見事なもので、見応えがあります。
また、殺しに至るまでの主人公の心理描写を描き込んだため、殺害の理由が明確で、あまりホラー色は強くありません。
（幽霊や怪物など、正体不明、動機不明で襲いかかって来るからホラーになる）
ただ、往年のＢ級ホラ－映画の影響か、お約束のお色気シーンも盛り込まれています。
最後はかなり痛烈。
確かに、映画としては、親殺しまでした主人公を肯定出来なかったのでしょうけど・・・そこまでして手に入れたマンションで聞いたニュースが、サブプライム問題による世界金融危機で不動産価格暴落と言うのでは・・・
（５月２９日 シアター・Ｎ渋谷にて）
（作品データ）
■監督
パン・ホーチョン
■出演
チェン ・・・ ジョシー・ホー
（その他のキャスト）
■コピー
彼女が本当に欲しかったもの、それは――。
■Ｌｉｎｋ
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