ＹＯＹＯＣＨＵ
ＳＥＸと代々木忠の世界
これは、ＡＶ監督、“ヨヨチュウ”こと代々木忠監督の人生に迫るドキュメンタリー映画です。
８０年代初期の“本番”シリーズや、ドキュメント「ザ・オナニー」シリーズなど数々のヒット作・話題作を生み出し、監督作品５００本以上、販売本数累計７００万本超。そして、７２歳になる今でも現役と言う、ＡＶにおける「生きた伝説」とでも言える存在、代々木忠・・・映画は、監督本人へのインタビューと関係者証言、そして選び抜かれた２５本の映像ダイジェストによって、その波乱に満ちた人生をスクリーンに描き出します。
この映画、ドキュメンタリー作品としては、かなり力の入ったもので、浮ついた部分がありません。
ナレーションに「プロジェクトＸ」の田口トモロヲを起用している事もあり、それこそ、ＡＶのダイジェスト映像を除けば、そのままＮＨＫのドキュメンタリーとして放送出来そうな、真摯な内容になっています。
ＡＶの黎明期から活動しているだけあって、映画の内容は、ほぼ日本のＡＶ史になっています。
当時の貴重な映像もあり、興味深かったのですが、この映画の主役は、やはり代々木忠です。
その飽くなき探求心・・・単にオンナの裸と上辺だけのＳＥＸを撮る、商品としてのＡＶではなく、ＳＥＸの本質、そして、人間そのものへと迫っていく、その探求心と真摯さには感銘を受けました。
その姿勢があるから、一見、「性を商品化している」とフェミニズム団体から槍玉に上げられがちなＡＶ製作業でありながら、女性の理解と支持を受けられる。
ＳＥＸの深部を覗き込み、更に人間そのものへと迫る中で、心に問題を抱えた女性とコミュニケートし、その縺れた心をほぐして行った・・・と言うようなエピソードになると、一体、この人は何者だろう、と思ってしまいました。
（もっとも、これは精神医学者でもバックアップの必要な危険な行為であり、代々木忠監督、これで、一時、鬱病になってしまったそうです）
また、代々木忠監督の格好のいいこと。
鶴瓶師匠には「ヤクザ」と言われています（実際に若い頃はヤクザで、指詰めてカタギになったのです）が、ヤクザと言うより任侠。ピシっと筋の通った生き様に、７０過ぎても凛とした佇まい。
女ばかりでなく、男が惚れる男、と言う感じです。
そんな男が一生の仕事に選んだのが「ＡＶ」と言うと意外な感もありますが、なるほど、「性」は「生」に通じ、言ってしまえば「人間」そのもの。
嘘をつかない監督が、だからこそ踏み込んだ「人間の本質」を求める世界・・・これはいろいろと考えさせられる映画でした。
（３月１７日 シアターＮ渋谷にて）
（作品データ）
■監督
石岡正人
■出演
代々木忠 笑福亭鶴瓶 槇村さとる 和田秀樹 藤本由香里
加藤鷹 愛染恭子 栗原早記 柏木みな 高橋雅也（高橋がなり）
南智子 本橋信宏
ナレーション ・・・ 田口トモロヲ
■コピー
「心まで裸になれ！」
愛を問い続ける、魂のカメラ。
■Ｌｉｎｋ
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