ヒア　アフター

　これは、クリント・イーストウッド監督が、「死」を題材に綴るヒューマンドラマ。

　この物語は、３つのエピソードを平行して描いて行きます。
　ひとつめのエピソードは、パリで活躍するジャーナリストのマリー。彼女がバカンス中に訪れた東南アジアで津波に遭遇。辛うじて一命は取り留めたのだが、臨死体験をした彼女は・・・
　ふたつめは、サンフランシスコで倉庫管理の仕事をしているジョージ。彼には死者からの声を聞くことができる不思議な能力があった。かつて霊能者としてオフィスも構えていたが、今は、その能力を封印していた。ある日、通い始めた料理教室でメラニーという女性と知り合った彼は・・・
　みっつめは、ロンドンで暮らす双子の兄弟マーカス。突然の事故で兄を失い、再び、兄に会いたいと願う彼は、様々な霊能者の元を訪れるのだが・・・
　物語は、この、いずれも「死」に直面させられ、運命を翻弄された者たちが出会う事で動き出して行きます。

　クリント・イーストウッド監督も「死」を意識するようになったのか・・・と思って映画を観始めましたが、これが何とも力強い物語。
　物語は、死と死後の世界に触れ、それが誰にでも訪れる不可避の運命であるとは言いますが、それはこの映画のテーマではありません。
　「死」を逃れなれない運命としつつも、それまでの「生」を考えるように促します。
　「天国」も「来世」も語らず、この世の中で、運命を切り開き、限りある「これから」をひたむきに生きる、それこそが大事だと強く訴えます。
　
　クリント・イーストウッド監督、齢８０にして、まだ「これから」を生きようと言うのか・・・その、まぶしいばかりの生命力に満ち溢れた力強いメッセージに感動します。

PS
　こうした力強いメッセージ性のある映画、今こそ必要と思うのですが・・・津波の描写のせいで震災後の上映が打ち切りになってしまったのは何とも残念。

　（月日　にて）

（作品データ）

　■監督

クリント・イーストウッド　

　■出演

　マリー　・・・　セシル・ドゥ・フランス

　ジョージ　・・・　マット・デイモン
　メラニー　・・・　ブライス・ダラス・ハワード

（その他のキャスト）
　ジェイ・モーア　　ジョージ・マクラレン　　フランキー・マクラレン　　ディエリー・ヌーヴィック
　マルト・ケラー　　デレク・ジャコビ

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生きてゆくために──　

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