スプライス
これは、「ＣＵＢＥ」のヴィンチェンゾ・ナタリ監督による、ＳＦホラー・サスペンス。
「フランケンシュタイン」の系譜の末裔と言える、人造生命体の物語です。
大手製薬会社の研究員のクライヴとエルサは、複数の動物の遺伝子を結合（スプライス）させて生み出した人造生命体の研究に没頭していた。
これにより、人間に薬効効果のあるタンパク質や酵素を生み出すのが狙いだった。
その研究の最中、その生命体に人間の遺伝子を結合させる事を発案、倫理上、問題があると反対するクライヴを押し切り、エルサは、その遺伝子を持つ生命体を誕生させてしまう。
誕生した生命体は、変態を繰り返し、急速に成長。
“ドレン”と名付けられたその生命体は、知性も確認出来ると共に、美しい少女の上半身を持つ、ハイブリット生命体に成長し・・・
この映画の最大の見所は、クライヴとエルサによって生み出された新生命体、ドレンです。
少女の上半身に鳥足の下半身、毒針を持つ尻尾、腕には翼が畳まれ、胸には肺の他に鰓と鰭が潜んでいます。
この異形でありながら美しく、妖しくもエロティック。
広げた翼には天使、逆関節の足には悪魔を感じさせる辺りも、キリスト教文化圏ならではのメタファーでしょうか。
この成長したドレンを巡り、クライヴとエルサが三角関係になったり、親子関係になったり、様々な人間ドラマを描き出すのにも見応えがあります。
クライヴには、エイドリアン・ブロディ、エルサはサラ・ポーリーと言う演技巧者を揃えた事で、人間ドラマの部分の見せ場もたっぷり。
特に、優しい母の表情から、鬼気迫る怒りの形相、静かな狂気を秘めたマッドサイエンティストの顔…と、様々な表情を見せるサラ・ポーリーの演技は素晴らしいものがあります。
ドレンの成長と共に、様々な要素を重ねて複雑になっていくドラマもいい。
惜しいのは、先に作られた生命体、フレッドとジンジャーにより、展開が読めてしまう事と、終盤のクライマックスが、ホラーとしてありふれた血みどろ＆ショックシーンになってしまう事。
あと、ドレンの“性転換”もちょっとひっかかりました。
（実際にある例からすれば、逆だろう、と…）
エルサは「女」である故に選択した、ダークで意味深なラストシーンが余韻もあってよかっただけに、この辺りの展開がちょっと惜しい、と思いました。
（２０１１年１月９日 横浜ブルグ１３にて）
（作品データ）
■監督
ヴィンチェンゾ・ナタリ
■出演
クライヴ・ニコリ ・・・ エイドリアン・ブロディ
エルサ・カスト ・・・ サラ・ポーリー
ドレン ・・・ デルフィーヌ・シャネアック
（その他のキャスト）
シモーナ・メカネスキュ デビッド・ヒューレット ブランドン・マクギボン アビゲイル・チュ
■コピー
禁断の実験で生まれた“美しき新生命体”――
人類はその進化に後悔する。
■Ｌｉｎｋ
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