「ＢＲＯＴＨＥＲ」

　今日も、昨日に引き続き休日出勤。
　その後、映画館に行って、先週断念した「ＢＲＯＴＨＥＲ」を観て来ました。

　北野武、９本目の本作は、北野組の本格的世界進出第１弾。
　アメリカを舞台とした日英合作映画です。

　ビートたけし演じる、主人公の山本は昔気質の武闘派ヤクザ。
　抗争で組長を殺され、警察の圧力を受けて組は解散、主要な幹部は敵対する組織の杯を受ける事になったが、山本には到底それは受け入れられない。
　居場所をなくし、弟のいるアメリカに渡った山本は、ケチな麻薬売人をしていた弟の元締めと揉めた事をきっかけに、そのシマを奪い、日本流のヤクザ組織を作り上げて行く・・・

　身体ひとつで渡米した武闘派ヤクザが、内に秘めた暴力だけでのし上がって行く、この前半部分はなかなかに痛快。
　何も持たない人間が、己ひとつを武器に成功を掴む、と言うのは、これもひとつのアメリカン・サクセスストーリーでしょう。
　ただ、これもやっぱりヤクザ映画。
　血と暴力の上に築かれた栄光は長くは続かず、その果てには破滅が待っているのです。

　この構成、どっかで観た事があるな、と思い出したのが、デパルマの「スカーフェイス」。
　あれも、イタリアから渡って来た、アル・パチーノ演じるチンピラが、麻薬組織を作り上げ、そして破滅していく、と言う物語でしたが、この「ＢＲＯＴＨＥＲ」が違うのは、たけし演じる山本のスタンスです。
　派手な成功を目指していたアル・パチーノと違い、山本は最初から死ぬ気。
　なにしろ、渡米する際に、腹心の舎弟に、
　「俺、死ぬことになったから」
　と言い残しているくらいです。
　アル・パチーノが栄光の頂点で己を変容させ、破滅して行ったのに対し、山本は、最初っから最後まで変わらない。
　その瞳の先にあるのは、最初っから破滅しかなかったように思いました。

　そんな破滅への道を淡々と歩む男の生き様を反映したかのように、この映画、その、溢れる程の血と暴力描写にも関わらず、静かで、穏やかな印象があります。
　山本が、最後に何とか生き延びさせるお気に入りの舎弟と、下らぬイカサマ賭博に興じている様子が何とも楽しそうでした。

　（２月１１日　ワーナーマイカルシネマズつきみ野にて）

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