七瀬ふたたび
これは、筒井康隆の人気ＳＦ小説「家族八景」「七瀬ふたたび」「エディプスの恋人」の、“火田七瀬３部作”から、第２作に当たる「七瀬ふたたび」を映画化したもの。
監督は小中和哉。脚本は、ＳＦものやアニメ作品で定評のある伊藤和典。
ヒロインの七瀬は人の心が読める超能力者（テレパス）です。
この「七瀬ふたたび」は、ＳＦと言うよりサスペンス・スリラーで、七瀬のような特殊能力を持つ人々を抹殺しようとする組織が登場し、七瀬と仲間たちは組織からの逃避行を続ける、と言う物語になります。
シリーズ中この第２作目に映像化が集中しているのは、この作品がアクションなどの見せ場が多く、映像化しやすいからでしょうけれど・・・七瀬のテレパス能力に触れた人々が見せる人間模様が魅力的な「家族八景」や、七瀬が“神”になってしまう壮大なスケールの「エディプスの恋人」の方が、このシリーズらしいと思うのですが・・・
もっとも、この映画、アクションは大した事無く、サスペンスもそこそこの盛り上がりしか見せません。
肝心の七瀬の読心力描写も、文字に頼ると言う体たらく。
（原作でさえ、言葉だけでなく、描写に工夫していたし、同時上映された中川翔子が監督した「七瀬ふたたび 〜プロローグ〜」でも、読心描写を言葉ではなく、ビジュアルで見せようとしていたのに・・・）
更に、特殊撮影のレベルは明らかに低く、これじゃ、ＴＶドラマ並み。
このシリーズがＴＶドラマで５度も映像化されたので、そのイメージで作ったのかもしれませんが、仮にも劇場作品なのだから、もう少し何とかならななかったのか、と思います。
（湖上を駆け抜ける七瀬の描写など、失笑ものの稚拙さでした）
また、原作を意識したのでしょうか、登場人物の服装が妙に古臭く、それが現代の設定と言う事に違和感がありました。
この「七瀬ふたたび」という物語には問題があります。
この物語は主人公たちが、追われて、追い詰められて、ひとりずつ殺されて行くと言う救いのない、暗い展開。
こうした展開の物語の場合、多くは途中で主人公側が反撃に転じ、状況をひっくり返すのですが、この物語ではみんな殺されて終わってしまうのです。
しかし、この映画版では最後の最後に、意外な方法で状況を打開させます。
それは、序盤で伏線が張られているのですが・・・ここに持って来るのか、と言う展開、そして最後に再び出る「七瀬ふたたび」というタイトル。
これは、映画版のオリジナル展開。
タイトルにあらたな意味を与え、一発逆転の可能性を秘めた展開に繋げ、カタルシスを覚えさせたラストには感心しました。
（１０月３日 川崎チネチッタにて）
（作品データ）
■監督
小中和哉
■出演
火田七瀬 ・・・ 芦名星
（その他のキャスト）
佐藤江梨子 田中圭 前田愛 ダンテ・カーヴァー 今井悠貴
川原雅彦 平泉成 吉田栄作
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