フェーズ６
これは、致死率１００％という新型感染症で、人類が絶滅の危機に瀕してしている近未来で、生き残る為に逃避行する若者たちの姿を描いたホラー・サスペンス。
ブライアンとダニーの兄弟は乗り捨ててあったベンツを盗み、子供時代を過ごしたことがある海辺を目指す。
その海辺のホテルは寂れ、最近では訪れる人もいないはず。隔離された場所で、ウィルスの沈静化を待とうと言うのだ。
同乗者はブライアンの恋人ボビーと、ダニーのガールフレンドのケイト。ガソリンを満タンにしたベンツは砂漠の一本道を海を目指して走り続ける・・・
この映画、低予算のせいもあって、見た目はひどく地味です。
未知の感染症により、人類が滅びようと言うのに、死体の山が築かれて猛烈な悪臭が周囲に立ちこめるとか、穴の中で死体を焼く煙が町を包み込むといったシーンもなく、人々が感染のパニックから暴徒と化して街を破壊するような場面もありません。
この映画の中ではそうした大量死と、パニックのピークは既に過ぎていることになっているようです。
予算のせいもあるでしょうが、この映画は、感染症による社会の崩壊と言うパニックを描くのではなく、危機に瀕した時、人間、ひとりひとりが持つ人間性が崩壊していく怖さに焦点を当てて描こうとしています。
（もっとも、それだけでは尺が持たない、と思ったのか、ホラー風演出が随所に入れられており、ホラーの苦手なはらはちょっとうんざりしていました）
ですから、ドラマ的な見せ場は、感染した仲間を切り捨てていくシーンになります。
感染者との接触は危険。だから感染者を、車から追い出して放置していくのです。
だけど、それは同時に人として大切な何かを置いて行く事になります。
故郷を捨て、親を捨て、兄弟も友人も、恋人すら捨てて、ただ生きる為に海を目指す。
それは、同時に人間の社会性を捨てる事でもあります。
人間は社会性の生き物であり、その社会性をなくして生きて行けるのか？
全てをなくして辿り着いた浜辺で、主人公が知ったのは、「人として生きる」事を失った、意味のない生。
つまり、生きていても意味がない、言い方を変えれば緩慢たる死。
それを突きつけたラストに静かな衝撃がありました。
（５月４日 シネマスクエアとうきゅうにて）
（作品データ）
■監督
アレックス・パストール／デビッド・パストール
■出演
ダニー ・・・ ルー・テイラー・プッチ
ブライアン ・・・ クリス・パイン
ボビー ・・・ パイパー・ペラーポ
ケイト ・・・ エミリー・ヴァンキャンプ
（その他のキャスト）
クリストファー・メローニ キアーナン・シブカ マーク・モーゼス
ジョシュ・ベリー ティム・ジャニス デイル・マレー ディラン・ケニン
メアリー・ピーターソン
■コピー
生き残ることに、意味はあるのか――。
■Ｌｉｎｋ
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