２０１２
これは、「インディペンデンス・ディ」や「ディ・アフター・トゥモロー」のローランド・エメリッヒ監督による大スケールのディザスター・ムービー。
マヤの暦に予言されていたと言う地球壊滅の日を圧倒的なビジュアルで描く映画です。
２００９年、未だかつてない規模の太陽フレアにより放出された、新ニュートリノ。
それは、これまで知られているニュートリノと違い、通過する際に物質と反応する特性を持っていた。地球を透過する新ニュートリノにより、地球のコアは加熱され、急激に温度が上昇していた。
その事実は各国首脳へと伝えられ、あるプロジェクトが極秘裏に開始された。
２０１２年。
売れない作家のジャクソンは、離婚した妻と暮らす子供たちを連れて、イエローストーンへと向かう。
そこで出会った怪しげな男、チャーリーから“地球最後の日”が近い、と知らされたが・・・
地球を襲うカタストロフと言うのはこの種の映画としては定番の描写ですが、この映画のスケールは前代未聞の圧倒的なもの。
序盤のロスアンゼルス市壊滅は圧倒的な迫力です。
その都市崩壊のカタストロフの中、主人公たちが切り抜けて脱出するのですが・・・これが余りにも出来過ぎ。
（特に、倒壊し、進路を塞いだビルの中をリムジンで突っ切る描写など、余りにあり得ない描写で、もう笑ってしまいました）
主人公が迫る危機をどう切り抜けるのかは、確かに手に汗握る描写でしょうが・・・この後も似たようなシーンを立て続けにやるので、さすがに飽きます。
そうした描写から見て、この映画、ディザスター・ムービーを茶化しているとしか思えません。
都市崩壊、いや地球壊滅を、スラップスティック・コメディにしようとしている、とさえ言えるのではないか、と思います。
ただ、この映画、笑えません。
確かに、パニックシーンの中に、滑った・転んだの類のギャグを入れているのですけど、笑えないのは、それで人が死んでいるから。
このギャグセンスはさすがにちょっと・・・
あと、この映画、少々テンポが悪く感じられました。
尺の方もやや長い映画なので、緩急つけようとしている狙いは判るのですが・・・感動を誘うシーンが妙に長くてテンポが悪くいらいらする事がありました。
むしろ、こうした部分をバッサリ切って、パニック部分のテンポのよさで一気に見せた方が、こう言う映画としてはよかったんじゃないか、と思います。
また、この映画、かなり毒が強い。
ホワイトハウスを、アメリカ最良の大統領と言われるジョン・Ｆ・ケネディの名を抱く航空母艦が大統領もろとも押し潰す、と言う描写は、その最たるもの。
（さすがドイツ人のエメリッヒ監督らしい反骨精神とも言えます）
それ以外にも、救命用の“箱船”に乗船出来るのは、高額（１人１０億ユーロ）の乗船券を買った金持ちと政府関係者だけ、と言う辺りもいかにもな感じ。
（建造にあたった中国人労働者に乗る権利がない、と言うのも・・・）
まぁ、それならそれで、最後までそれを貫けば、見るべき姿勢ではあるのですが・・・この映画、終盤にその勢いと毒を失って行きます。
クライマックスは、何と、“箱船”の浸水を食い止める為、主人公がひとり水没した油圧室に潜って修理する、と言うもの。
「ポセイドン」（オリジナルの「ポセイドン・アドベンチャー」でも同じ）と、同じシチュエイションです。
主要登場人物がひとりずつ欠けて行くスタイルの「ポセイドン」ともかく、本来、ディザスター・ムービーは災厄に対し、人々が結束を固め、絆を強め、そして愛を深めて行く・・・その人間模様こそがパニック映画の醍醐味であり、そうして災厄に立ち向かい乗り越える事でカタルシスを得るもの。
そうした意味で、個人、せいぜい家族の結束を確認するだけのシーンがクライマックスとは・・・ここで、すっかり脱力してしまいました。
しかも、そこで感動を誘うのが安っぽいヒューマニズムです。
映画は、ここまで数十億の人々を殺しているんです。
それがクライマックスで、主人公ひとりの命が助かって拍手喝采・・・って、ヒューマニズムの安売りにも程があります。
この映画に相応しいクライマックスとは、本来、見捨てられるはずだった“箱船”建造労働者や、主人公達一般市民が団結し、“箱船”を救って、自分たちを見捨てた金持ちどもに目にモノ見せる、と言うものではなかったのでしょうか？
でも、そうしたある意味でありきたりなクライマックスではない辺りも監督の狙いなのかもしれませんが・・・
（１１月２７日 １０９シネマズＭＭにて）
（作品データ）
■監督
ローランド・エメリッヒ
■出演
ジャクソン・カーティス ・・・ ジョン・キューザック
“チャーリー” ・・・ ウディ・ハレルソン
（その他のキャスト）
キウェテル・イジョフォー アマンダ・ピート オリヴァー・プラット サンディ・ニュートン
ダニー・グローヴァー ヘンリー・オー
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これは、映画か。
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