天使の恋
ＴＥＮＳＨＩ ＮＯ ＫＯＩ
これは、若い女性向けの携帯サイトで、史上最高のアクセス数を誇った人気小説を、これが監督デビューとなる女性監督・寒竹ゆりが映画化したもの。
主人公の理央を演じるのは、本作が映画初主演となるカリスマモデルの佐々木希。恋人となる光輝を谷原章介が演じています。
主人公の理央は、１７歳の高校生。
とびきりの美少女で、学校でも他の少女たちから憧れの眼差しで見られる特権階級。だがその心の中は、荒んでいた。
援助交際で周囲の男たちを手玉に取り、美人局の恐喝さえ平然と行っていた。友人と称する少女たちの心を弄び、利用するだけの付き合いしかしない。
そんな理央が、ひとりの男性に恋をしたことで大きく生き方を変えていく。
だが、その相手、大学で日本史を教える光輝には、理央に伝えられない重大な秘密があった・・・
この映画、物語としての出来映えはひどいものです。
まぁ、最近のケータイ小説とやらは、こんなものなのでしょうけど・・・“運命の恋”とやらに、いじめと乱れた性を味付けにまぶし、死と、難病モノの要素を絡めて涙を誘う、と。
設定の甘さ、現実味のなさも、文句つける以前に呆れるような出来です。
ただ、そんな見るに耐えない物語を、立派な映画にしている、ひとつの要素が佐々木希です。
なるほど、これがカリスマモデルの存在感と言うものか。
そこにいるだけで空気が変わる、いや、「掃き溜めに鶴」と言うのはこう言う事か、と問答無用で納得させる存在感。
前半、恋に落ちるまでの理央は、まったく感情移入も出来ない嫌な女なのですけど、それでも、このルックスと、くるくる変わる服装で目を楽しませてくれます。
まるで佐々木希主演のファッションショーで、正に本領発揮と言う所。
後半の、正に天使のような天真爛漫な可愛らしさも微笑を誘うでしょう。
ひどい物語の映画だけど、筋としては、ヒロインがひとりの男性との出会いを通して、最悪の女から素直で優しい女の子へと変化していくというのが大まかな流れ。
そうして見ると、物語は決して新しくはなく、オーソドックスなもので、古典的とさえ言えるでしょう。
こんな古典的な物語の何処が、今時の女の子たちを魅了しているのでしょうか？
それは、その古典的な所にあるのではないでしょうか？
女の子は、今の自分を変えてくれる存在を求めています。
要は、“白馬の王子様”ですね。
この映画のヒロインである理央も、自分自身で積極的に行動しているように見えて、「誰か」の手を借りて変身するという点では、王子様を待ちわびる童話のお姫様と変わりません。
時代は変わっても、女の子たちは“白馬の王子様”を待っています。
そんな時代を越える普遍的な物語の構造が、この映画を辛うじて形にしているように思います。
（１１月１３日 ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）
（作品データ）
■監督
寒竹ゆり
■出演
小澤理央 ・・・ 佐々木希
小澤光輝 ・・・ 谷原章介
（その他のキャスト）
山本ひかる 大石参月 七菜香 加賀美早紀
酒井若菜 深水元基 津田寛治 吹越満
笑福亭鶴光 若村麻由美
■コピー
本気で恋したら、運命にぶつかった。
■Ｌｉｎｋ
［戻る］