白夜

　これは、偶然出会った男女の、つかの間の恋の物語。
　原作は、ドストエフスキーの同題小説で、過去にも幾度か映画化されています。　
　この映画の小林政広監督はロベール・ブレッソン監督が映画化した「白夜」を観て、自分も同じような映画を作りたい思っていたのだとか。
　出演は、ＥＸＩＬＥの眞木大輔と吉瀬美智子。

　フランス、リヨン。
　日本人の男が、橋の上でひとりの日本人の女に目を留める、異国で日本人に出会った懐かしさで、男は彼女に声をかけた。
　彼女はこの橋の上で、恋人と再会する約束があるという。だが恋人は現れない。恋人は彼女を捨てたのではないか？
　彼女は不安になる。
　そして出会ったばかりの男と、つかの間の恋に落ちる・・・

　これは、予告編を観て気になり、期待して観に行ったのですが・・・ちょっと期待外れでした。
　物語は極小さく、しかもシンプル。
　物語自体は定評があるのですから、あとは綺麗にまとめてくれれば・・・と思っていたのですが、これは映画として出来が悪すぎる。
　恋愛映画として必要な絵の美しさ、艶っぽさの感じられない絵作り、耳を疑う程に低質な音声と、煩い音楽。
　撮影は手持ちカメラを多用したものなのですが、このカメラが揺れる、揺れる。
　アクション映画じゃないのですから、そんな所で臨場感を出しても仕方ない。
　ふたりの心が揺れているシーンでのカメラ揺れは描写として許せても、次第に心がひとつになって行く場面で、カメラマンの足取りに合わせて揺れまくるカメラには怒りさえ覚えました。

　あと、物語はともかく、この映画の描き出すキャラクターはどうか。
　特に、この主人公の男にはどうにも感情移入が出来ませんでした。
　男は人間関係から逃げ、つかの間の温もりを女に求めるだけの人物にしか見えません。
　この映画からは、男は身勝手、女はそれに振り回されるだけの愚者に思えてしまいます。
　クライマックスのシーンは、受け取り方によっては悲劇と思えるもので、原作とは異なる解釈も出来るようになっています。
　（むしろ、原作とは異なる悲劇的な解釈をさせようとしているように思えました）
　解釈の仕方によっては、男の身勝手さが、女を破滅させた、ともとれるこの内容。
　どうにも後味がよくない映画でした。

　（１０月３日　１０９シネマズＭＭにて）

（作品データ）

　■監督

　小林政広

　■出演

　男　・・・　眞木大輔
　女　・・・　吉瀬美智子
　

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