| 放 浪 記 |
童 貞 |
これは、小谷野敦の自伝的小説「童貞放浪記」を映画化したもの。
東大の大学院を出たあと関西の大学で講師をしている金井淳は、３０歳になる今も女性経験のない童貞である。
不細工で、不器用で、無粋で、女性にモテる要素はなかったし、しかも、東大で学ぶ為に、青春の殆どを費やしてしまったので、女性とつき合った事さえ殆どない。
勿論、童貞かそうでないかで男の人生がどう変わるわけでなし、性体験の有無で人間性がどうにかなるわけじゃない。
金井にだって、そんなことは頭じゃわかってる。
でも、それが自分の負い目になっていることも事実なのだ。童貞を捨てれば、何か人生が変わるかもしれない。
金井は、ストリップ小屋や風俗店に行ってはみるが、小心さと不器用さ故、上手くやる事が出来ずにいた。
そんな時、彼は出張先で大学院の後輩の北島萌と再会し、下心全開で彼女に接近するのだが・・・
この映画・・・何と言うか、身につまされるエピソードがあり過ぎで、笑うに笑えず、ちょっと困ってしまいました。
主人公・金井の抱え込んでいる「童貞ゆえのコンプレックス」に、心当たりのある男は少なくないのではないか、と思います。
セックスなんてものは所詮、男性器を女性器に差し込んで摩擦するだけの話で、体験してしまえば、それ自体は大した事はありません。
ある意味、「手をつなぐ」とか「キスをする」のと同レベルの事で、重要なのは、その行為ではなく、関係にあるのだ、と言う事は、これは誰しも判っている筈。
しかし、それでも納得出来ないのです。
正に、「判ってはいるが、判る訳にはいかない」状況です。
金井は、先輩・後輩と言う力関係を利用し、彼女が断り難い状況を作り出し、彼女に「セックス」を求めて行きます。
それが自然な男女の関係性を阻害し、彼女の全存在の中から「セックス」だけをかすめ取ろうとするものであると知りつつ、金井はそれを止められません。
この事に彼女は傷つき、金井自身も傷ついてしまいます。
この映画の困る部分は、これを真剣に描いてしまっている事で、これをもっと極端に描くか、茶化すかすれば笑えるとは思うのですが、これがまったく笑えません。
主人公のしでかす失敗も、あまりにリアル過ぎて・・・
（正直、似たような事を幾度もやってしまっているのですね、恥ずかしい話ではあるけれど）
主人公・金井を演じた山本浩司はハマリ役だけど、この映画、何と言ってもいいのは彼女、北島萌を演じた神楽坂恵。
彼女、冷静に考えればかなりタチの悪い女なのだけど、それを差し引いて余りある魅力。
Ｉカップのバストは神々しいまでの迫力で、これは金井が狂うのにも納得、と言う所でしょう。
物語の終局もかなり痛い終わり方。
それにしたって、童貞をヘンタイの一種のように言わなくともよさそうなものだけど。
（８月１２日 ヒューマントラストシネマ文化村通りにて）
（作品データ）
■監督
小沼雄一
■出演
金井淳 ・・・ 山本浩司
北島萌 ・・・ 神楽坂恵
（その他のキャスト）
堀部圭亮 古舘寛治 松井周 内田慈 木野花
志賀廣太郎 綾田俊樹 結城リナ 冴島奈緒
■コピー
この東大出の男、三十にして童貞である
■Ｌｉｎｋ
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