スター・トレック
これは、「スター・トレック（邦題「宇宙大作戦」）」シリーズの劇場版最新作。
今回は、ＵＳＳエンタープライズ号、初のミッションを通して、カーク船長が誕生するまでを描きます。
カーク以下、スポック、マッコイ、スールー、チェコフ、ウフーラといったオリジナルの「宇宙大作戦」お馴染みのメンバーが勢揃いします。
ジェームズ・Ｔ・カークが生まれたのは、ＵＳＳケルヴィンが謎の宇宙船に襲撃され、危機に瀕している時だった。
カークの父は、妻と息子、それに８００名のクルーを救うために宇宙に散った。
それから２２年、立派に成長したカークは、宇宙艦隊へ志願する。
３年後、士官候補生となっていたカークは、スポックと出会う。
スポックの出した演習テスト「コバヤシ丸問題」に挑んだカークは、解決策のない問題を、設定を書き換える事でクリア。
だが、それを“不正”と弾劾され、カークは謹慎を命じられてしまう・・・
１９６６年のテレビ放送開始以来、数十年に渡ってテレビや映画や小説などでエピソードが積み重ねられて来た「スター・トレック」は、米国においては、“トレッキー”と呼ばれる多くのファンを獲得しましたが、それは逆に、作品を袋小路に追い込む事になりました。
熱心はファンは、過去の作品を愛するが故に、新作もこれまでの延長線上にある事を求め、それ故、過去のシリーズを知らない事には新作のエピソードが理解できない、と言う敷居の高さを持つ事になりました。
多くのファンがいる米国向けであればそれでもよいのですが、莫大な製作費を要する現代のＳＦ映画としては海外市場への展開も必須です。
それ故、今回の新作は、シリーズ全体として世界観を共有するというこれまでの伝統と、物語を一度リセットし、新たな観客を開拓する、と言う映画会社の意図、そして、この「スター・トレック」を２１世紀に通用する新しい物語に作り直したい、と言う作り手側の希望・・・それらを全て満足させると言う難題に直面したＪ・Ｊ・エイブラムス監督は、映画の中のカーク同様の策を取ります。
そう、設定をを書き換え、物語を一からリセットしたのです。
世界観の共有と物語のリセットは、本来ならまったく矛盾したものですが、歴史を書き換えてしまう事で、そのパラドックスは解消します。
この映画はカークやスポックの若き日々を描くプリクエル（前日譚）だけど、そこで描かれている「過去」がじつは「未来」でもあるというメビウスの輪のような構成になっているのです。
ここには少年時代のスポックが登場します。青年スポックがカークと対立しながら絆を深めていくエピソードも登場します。そして、老人になったスポックも登場するのです。
この老人のスポックを、オリジナルスポック役のレナード・ニモイが演じている辺りもファンを感動させるでしょう。
この展開には、正直、やられた、と思いました。
なるほど、これなら古いファンを唸らせ、新しい観客を作品世界に引き込む事が出来るでしょう。
新しいエンタープライズのブリッジにはカーク以下、お馴染みのメンバーが勢揃いしています。
しかし、書き換えられた物語では、これがみんな若い。
監督は、見事、物語を書き換え、２１世紀に通用する新しい設定と、若々しいキャラクターを手にしました。
２１世紀の新しい「宇宙大作戦」はここから始まるのです。
（６月３日 ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）
（作品データ）
■監督
■出演
ジェームズ・Ｔ・カーク ・・・ クリス・パイン
スポック（青年） ・・・ ザカリー・クイント
スポック（老人） ・・・ レナード・ニモイ
Ｄｒ．マッコイ ・・・ カール・アーバン
スールー ・・・ ジョン・チョウ
チェコフ ・・・ アントン・イェルチン
ウフーラ ・・・ ゾーイ・サルダナ
（その他のキャスト）
エリック・バナ ブルース・グリーンウッド サイモン・ペッグ ベン・クロス
ウィノナ・ライダー レイチェル・ニコルズ クリフトン・コリンズJr.
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