余命1ヶ月花嫁


 これは、若年性乳ガンにより24歳で亡くなった長島千恵さんの、実話を元にした物語。
 2007年、長島千恵さんの死の直後に放送された同題のTVドキュメンタリー番組は、大きな反響を呼び、書籍化された単行本はベストセラーとなり、乳ガン検診の重要さと、生きることの素晴らしさを伝えようとする、その内容は多くの女性に感動と共に勇気を与えた、と言われます。
 この物語を、榮倉奈々と瑛太主演で映画化したのがこの作品です。

 イベントコンパニオンだった千恵は、展示会で知り合った広告代理店の会社員、太郎と交際を始める。
 真面目な太郎の人柄に惹かれ、やがて同棲するようになった2人だが、その幸せは長く続かなかった。
 若年性乳ガンを患った千恵は、手術の直前に太郎に別れを告げた。
 母をガンで亡くした千恵は、人がガンによって蝕まれ、変わって行く事で周囲を不幸にする事を知っていた。
 だが、太郎はそんな千恵を受け入れる覚悟を決め、姿を消した千恵の後を追うのだった・・・

 この物語は、既にTVや書籍などで知名度もあり、また、予備知識なくともこのタイトルでは、純愛ものの難病もの、しかも悲劇と言う事は判っています。
 観客も「泣く」為に観に来ているような映画ですが、その出来映えについては、及第点と言う所でしょうか。
 (実際、映画中盤以降は泣き所満載です)
 いたずらに悲劇を盛り上げるのではなく、若いカップルが愛を育んで行く様子や、幸せそうな光景をきちんと描いているのは、この映画のいい所。
 また、榮倉奈々をひたすら魅力的に撮っているので、これは榮倉奈々のアイドルムービーとしても出来は上々。彼女のファンならずとも、その愛くるしさは、多くの人を魅了する事と思います。
 もっとも、綺麗に描く為に、(恐らく、意識的に)ネガの部分を描いていないのですが・・・まぁ、闘病ドキュメントを描く映画ではないから、それも仕方ないのでしょうか。
 また、榮倉奈々も、この映画ではかなり頑張っている印象。これは彼女の代表作になるでしょう。
 
 映画は良心的に、丁寧に作られていると思いますが、ちょっと人物のクローズアップがくどいかな、と言う感じ。
 もっと映画らしい広がりのある絵が欲しかったように思います。

 あと、気になったのは、「世界の中心で愛をさけぶ」との酷似。
 まぁ、「世界の中心で愛をさけぶ」とて、大してオリジナリティの高い映画ではなく、吉永小百合の「愛と死を見つめて」との類似を指摘されていたりもしたのですが・・・それにしても似通った印象を与えてしまうのはどうしたものか。
 確かに、ウエディングドレスは、この物語では着ない訳にはいかないけれど、ラスト、死後にメッセージを残す辺りなど、そのまんまではないか、と思ってしまいました。
 (榮倉奈々も、素朴で清楚なタイプで、長澤まさみとタイプが似通っているんです)

 この物語は確かに素晴らしいもので、病と戦いながら最後までひたむきに生きた長島千恵さんと、彼女を支えた赤須太郎さんのエピソードは、多くの人を感動させるでしょう。
 でも、だからこそ、これを、ありがちな難病ものの純愛ドラマのフォーマットで語って欲しくなかった、そう思ってしまうのです。

 (5月10日 MOVIX本牧にて)


(作品データ)

 ■監督

廣木隆一

 ■出演

 長島千恵 ・・・ 榮倉奈々
 
 赤須太郎 ・・・ 瑛太

(その他のキャスト)
 手塚理美  安田美沙子  大杉漣  津田寛次
 田口トモロヲ  柄本明 

 ■コピー

明日が来ることは奇跡です。

 ■Link

http://www.hanayome-movie.jp/index.html


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