これは、コーエン兄弟による、辛辣な風刺を含んだブラックコメディ。
　しかし、この映画、出演者がえらく豪華です。
　ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジョン・マルコヴィッチ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、リチャード・ジェンキンスと、ハリウッドの大物スターがずらり。
　この全員がアカデミー賞受賞者、あるいはノミネート経験者なのですから凄いものです。
　コーエン兄弟もアカデミー賞監督だし、これは、文句なしに現在のハリウッドを代表するそうそうたる面々。これだけの面子を揃えて、おバカな犯罪コメディを作ってしまう、と言うのが更に凄い事なのかもしれません。

　フィットネスクラブで働く筋肉バカのチャドが、クラブに置き忘れられていたＣＤ−ＲＯＭを拾った事から物語は動き出します。
　ＣＤ−ＲＯＭの内容は、ＣＩＡの活動を綴ったメモと、謎の数字の羅列。これは、ＣＩＡの機密文書に違いない、と考えたチャドは、同僚で、出会い系サイトにハマっているオールドミスのリンダと共謀し、持ち主を突き止めて、それをネタに強請ろうとするのだが・・・
　実は、その内容は、アル中でＣＩＡをクビになった元調査官のオズボーンが、暇つぶしに綴ったヘナチョコ自叙伝の下書き原稿だった。
　
　これだけの豪華キャストを揃えた映画となると、最近では「オーシャンズ１１」シリーズが匹敵するでしょうか。
　オスカー監督とオスカー俳優たちが手を組んで（あ、キャストも一部ダブってますね）、と言う所は同じですが、映画の方向性は正反対。「オーシャンズ１１」シリーズの登場人物は、切れ者のプロフェッショナルばかりで、格好良く登場しますが、この映画の登場人物は、揃いも揃ってお馬鹿の上に間抜けでカッコ悪い。
　しかし、「オーシャンズ１１」の登場人物たちより、この映画の登場人物たちの方が身近に感じられ、感情移入もし易いでしょう。
　なにせ、世の中「切れ者で格好よい」人より、「馬鹿で間抜けでカッコ悪い」人の方がずっと数が多いのですから・・・

　そして、この映画の登場人物は揃いも揃って自分の事しか考えない。
　そんな自己中心的な登場人物達が、それ故、自分しか見ていないが為に、破滅して行く様を滑稽に描き、笑いモノにしよう、言ういささか趣味の悪いブラックコメディ。
　破滅を描く故、血なまぐさいシーンもあり、これは決して気楽に笑える映画ではありません。
　でも、ふと我に返り、こうした利己的な行動を自分でもついついしてしまう事、そして、思い込みと勘違いが世の中を動かしている、そんな仕組みに気づいてしまったら、これはもう笑えません。
　ギャグは昇華すると笑えなくなるものですが、これは、正にその典型。
　辛辣な皮肉と風刺に満ちた映画です。

　（４月２６日　ＭＯＶＩＸ本牧にて）

（作品データ）

　■監督

イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン

　■出演

　ハリー・ファラー 　　　　　 ・・・　ジョージ・クルーニー
　リンダ・リツキ　　　　　　　・・・　フランシス・マクドーマンド
　チャド・フェルドハイマー　・・・　ブラッド・ピット
　オズボーン・コックス　　　・・・　ジョン・マルコヴィッチ
　ケイティ・コックス　　　　　・・・　ティルダ・スウィントン

（その他のキャスト）
　リチャード・ジェンキンス　　エリザベス・マーヴェル　　Ｊ・Ｋ・シモンズ

　■コピー

衝撃の結末！

　■Ｌｉｎｋ

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