スラムドッグ
＄
ミリオネア
これは、今年度のアカデミー賞で、作品賞・監督賞・脚色賞など、俳優部門を除く主だった賞８つを受賞した話題作。
監督は「トレインスポッティング」のダニー・ボイル。
出演者が国際的には無名である事もあり、強いアピールには欠けるものの、その内容は確かにアカデミー賞に相応しい、力作です。
日本では、みのもんたの司会で人気のクイズ番組「クイズ＄ミリオネア」は、イギリス生まれの世界的な人気テレビ番組です。
２０００年から放送されているインドでもこの番組は大人気。
この番組に出場した、ムンバイのスラム育ちの青年、ジャマールが、次々正解して、ついに１０００万ルピーの大金をゲット。そして、最高賞金を獲得する最後の１問にまでたどり着いた。
これまでに出場した医者や弁護士などのインテリたちでも、ここまで到達した者はいない。
ジャマールは、不正の疑いで逮捕され、警察で厳しい取り調べを受ける事になる・・・
この映画、１１億の人口を抱える大国・インドを舞台とする割には小さな映画です。
確かに、主人公のジャマールは、インド各地を移動していくが、その関心は自分の身の回りに限定されています。
映画は、インドの急速な発展と、それが生み出した途方もない貧富の差や、ギャングたちの血なまぐさい抗争も描きますが、ジャマールは、そうした社会の出来事には関心を持ちません。ジャマールの世界は、自分と、“運命の女性”ラティカ、それに兄・サリームだけなのです。
ただ、映画は、そうしたジャマールの世界観を、肯定的に描いています。
一途に夢の女性を追いかけるジャマールに対し、現実社会の中でしたたかに生き抜く兄・サリーム。
そして、運命の女神は、夢を追ったジャマールに微笑みかけるのです。
その点で、この映画は、夢を抱く大事さを語りかける現代のおとぎ話であるかもしれません。
そして、夢を与えると共に、漲る活力と躍動感を描き、輝かしい明日への希望を描く・・・これぞ、映画が本来持つ魅力。
この映画は、とびっきりのおとぎ話であると共に、ハイテクや巨額の制作費に踊らされている現代の映画に対し、映画本来の魅力を取り戻させようとするものなのです。
アカデミー賞受賞にも納得です。
（４月２０日 ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）
（作品データ）
■監督
ダニー・ボイル
■出演
ジャマール・マリク ・・・ デヴ・パテル
ラティカ ・・・ フリーダ・ピント
サリーム・マリク ・・・ マドゥル・ミッタル
（その他のキャスト）
アニル・カプール イルファン・カーン ルビナ・アリ
■コピー
運じゃなく、運命だった。
■Ｌｉｎｋ
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