昴
−スバル−
これは、曽田正人の同題の人気コミックを、「不夜城」のリー・チーガイ監督が映画化したもの。
製作総指揮は、「グリーン・デスティニー」や「ラスト、コーション」のビル・コンで、映画製作は、日本・中国・韓国・シンガポールの４カ国合同。映画自体も、後半の舞台は香港となるなど、国際色豊かな映画です。
幼い頃に母と双子の弟・和馬を病気で失った宮本すばるは、“一匹狼”とも“野良猫”との称される孤独な少女。。
元ダンサーの日比野五十鈴が経営する場末の小劇場パレ・ガルニエの舞台に立ちながら、すばるは自分の中に眠る底知れぬ才能に気づかずにいた。
そんなすばるに注目したのは、バレエの若き俊英リズ・パークだ。彼女はすばるに出会った時から、自分にとっての終生のライバルになると見抜く。
やがて、名門バレエ団のダンサーとして初舞台を踏んだすばるに、リズは、香港で行われるコンテスト出場を持ちかける・・・
すばるを演じるのは黒木メイサ。
対象を射るかのような鋭い眼光、艶やかな長い黒髪。そして、野性的とも言える、イメージ以上にがっちりとした体格。
なるほど、これは素晴らしい存在感です。
撮影前に６ヶ月に及ぶトレーニングを行い、実際にバレエを踊るようになった努力家の一面は監督を感動させたそうですし、その自信溢れる態度は、天才・すばるを演じる相応しい。
実際、舞台経験も多い彼女、舞台の上では「幕が上がった瞬間、自分の事を無敵だと思う」と感じるそうで、そうした部分で、すばるに重なる部分を持っているのかもしれません。
正当な訓練を積んでいない天才少女がその才能を開花させ、エリート育ちのライバルと火花を散らすという展開は「ガラスの仮面」や「エースをねらえ」と同じで、少女マンガではお馴染みの展開と言っていいでしょう。
この映画の中心となるのは、勿論、天才少女・すばるの成長物語なのですが、この映画の面白い所は、成長物語よりも、天才の天才故の苦悩、そして、天才の周囲で翻弄される人々の姿を描いている所です。
天賦の才に恵まれた者を目前にして、天才でない人は否応なしに自分の才能のなさを思い知らされ打ちのめされます。
それは例えば、すばるにダンスを教えた日比野五十鈴の葛藤であり、すばるの幼なじみである呉羽真奈の想いです。
ステージで観客の注目を一身に集めるすばるを舞台袖から見つめながら、「私はすばるが本当に大好きなの。でも、それと同じくらい憎らしい」と吐き出す彼女の存在、それがこの映画を、凡人である観客にとっても感情移入の出来るドラマとなりました。
（４月１日 １０９シネマズＭＭにて）
（作品データ）
■監督／脚本
リー・チーガイ
■出演
宮本すばる ・・・ 黒木メイサ
リズ・パーク ・・・ Ａｒａ
日比野五十鈴 ・・・ 桃井かおり
呉羽真奈 ・・・ 佐野光来
（その他のキャスト）
前田健 平岡祐太 映美くらら 愛華みれ 周潔
筧利夫
■原作
曽田正人
■コピー
どんな運命も、踊ってみせる。
■Ｌｉｎｋ
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