フィッシュストーリー
これは「アヒルと鴨のコインロッカー」の中村義洋監督が、再び伊坂幸太郎の小説を映画化したもの。
２０１２年。
巨大彗星との衝突による地球滅亡まであと５時間と迫ったある日。
みな避難して抜け殻のようになった街で、いつものように営業を続けるレコード店では、パンクバンド「逆鱗」の「フィッシュストーリー」が流れていた。
それは、パンク誕生前に生まれ、全く売れる事なく解散したバンドが、最後にレコーディングした曲だった・・・
１９７５年。
「セックス・ピストルズ」のデビュー１年前。早過ぎたパンクバンド「逆鱗」は、プロデューサーに見出され、レコードデビューを果たすが、この時代にパンクを歌う彼らの音楽は認められる事はなかった・・・
１９８２年。
気弱な大学生の雅史は、コンパで知り合った謎めいた少女から「あなたは世界を救う」と告げられる。同時に、「今晩、運命の女性と出会う」とも。
しかし、その少女が、悪友にホテルに連れ込まれるのを止める事も出来ず、雅史は自責の念にかられながら、ひとりクルマを走らせる・・・
２００９年。
修学旅行でフェリーに乗船中、眠り込んで降りる港を過ぎてしまった女子校生の麻美は、「正義の味方」を名乗るコックの青年と出会う。
そして、そのフェリーがシージャックされ・・・
フィッシュストーリーとは、ほら話、眉唾モノの意。
どうせホラなら大きく吹こう、とばかりに３５年もの時間差に、４つの物語を押し込み、壮大なスケールの物語に仕上げて来ました。
正直、スケールの大きさに映画作りの体力が追いつかず、あちこちチープであったりするのですが、そこは、まぁ元々ホラ話だけに、多少のリアリティの欠如には目を瞑れます。
また、その物語を繋ぐ「逆鱗」を巡る物語を、きちんと出来た青春ドラマとして描き、また、その曲「フィッシュストーリー」の完成度を高めた事で、映画に筋を通しているのも見事と言っていいでしょう。
２時間弱の時間の中に、これだけのエピソードを詰め込み、とりあえず、繋いで見せたのも、これまた見事とは思いますが、気になったのは、正にその「繋ぐ」為に、「歯車」や「連接棒」になってしまった登場人物の扱い。
そうした人物まで、この時間の中で描く事は出来なかったのは判りますが・・・「繋がる」物語だけに、「繋がらない」ままの登場人物がひっかかってしまいました。
まぁ、これは原作小説を読むしかないかなぁ、と思いますが・・・
“奇跡”のクライマックスの後、散りばめられたパーツがひとつのストーリーに繋がっていくラストは確かに爽快ですけど・・・綺麗に繋がった物語には、逆に物足りなさを覚えたりするかもしれません。
（３月２８日 １０９シネマズＭＭにて）
（作品データ）
■監督
中村義洋
■出演
雅史 ・・・ 濱田岳
麻美 ・・・ 多部未華子
正義の味方 ・・・ 森山未來
（その他のキャスト）
中村有志 浅野麻衣子 岡田眞善 渡辺海弓 伊藤淳史
高良健吾 渋川清彦 大川内利充 江口のりこ 山下敦弘
向井康介 眞島秀和 眼鏡太郎 土屋真仁 原正幸 大森南朋
山中崇 波岡一喜 高橋真唯 加藤侑紀 井上佳子 滝藤賢一
大谷英子 石丸謙二郎 芦川誠 野仲イサオ 上田耕一 草村礼子
寺十吾 田村圭生 恩田括
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