オタクのリアル

安田誠
（２０１１　幻冬舎）

　これは、様々な統計データを元にオタクの人生を肯定し、一般人に比べいかに恵まれているかを解説するもの。
　いや、「３０歳・彼女なし・貯金なし・「魔法使い」（＝童貞）でもリア充になれますか？」の問いに、「そのままで充分リア充です」と、データ付きで解説する本、と言い換えてもいいでしょう。
　マンガ混じりの構成、文章の方も少々、遊びが過ぎる内容ではありますが、しかし、この本、引用されているデータはいずれもしっかりしたものであるのも恐ろしい所です。

　冒頭いきなり、
　「結婚とは男の権利を半分にして、義務を２倍にすることである」（ショーペンハウエル）
　「正しい結婚生活を送るのはよい。
　　しかし、それよりもさらによいのは全然結婚をしないことだ。
　　そう言うことの出来る人はまれにしかいない。
　　が、そう言うことの出来る人は実に幸せだ」（トルストイ）
　と、格言を以て結婚願望を打ち砕き、さらに、
　「子供ひとり育てるのに必要な養育費は２３６０万円」、
　「結婚をすると男性の家事時間は毎日１時間増える」、
　と、まぁ否定的な内容を次々に出して行きます。（それが全てデータ付き）
　確かに、
　「結婚をすると寿命が８．４年伸びる」
　と言うような事実も提出されていますが、基本的に、独身オタクの人生を肯定する方向です。
　
　そして、「失業」、「年金」、「相続」、そして「老後」と、この辺り確かに有効な情報ではあるのですが、さすがに、これは・・・

　大体、「オタク」などと言う人種はデータを集め、整理するのが好きな訳で、そうした人間に世間様の言う「真っ当な人生」から外れた人生を肯定するデータ与えてどうする？
　まったく、ケシカラン内容で、少子高齢化に拍車をかけかねないこの内容、こんな本を野放しにしておいていいものか、とさえ思いました。　
　・・・とは言え、そんなことを偉そうに言える立場でもないのですが・・・

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