アダルトビデオ最尖端
〜身体と性欲の革命史（クロニクル）〜

　藤木ＴＤＣ
（２０１１　コアマガジン）

　これは、８０年代に始まるＡＶ（＝アダルトビデオ）の深化と細分化の歴史を、当事者の証言を元に考証したもの。
　この本を、アダルト業界の裏話と思って軽く見ていると裏切られるでしょう。
　これは、ＡＶと言う日の当たらない業界でありながら、日本人ならでは真摯さと情熱、そして勤勉さをもって、日本ならではの「文化」を創り上げて来た、その歴史です。これには驚かされると思います。
　その内容は、ＡＶの王道と言える美少女ものを避け、ＢＵＫＫＡＫＥに始まり、自力歩行バイブマシン、シーメール、辺境モノ、格闘モノ、微乳、高齢者モノと、その発展の末端から、全体を俯瞰するものになっています。
　その中でも唖然とし、そして笑ってしまったのが辺境モノＡＶの章。
　アフリカ、ロシア、キューバと様々なエピソードが紹介され、圧巻は、内戦状態の旧ユーゴスラビア！
　「なんの野心も使命感もなく国境を越えて来た２人の若手ＡＶ監督はついに民族紛争のまっただ中にたどり着いた」
　との文章を読んだ時には、もう笑うしかありませんでした。
　だって、生きるか死ぬかの戦場ですよ。
　一旗揚げてやろうと言う野心家か、人道支援・平和活動と言う使命感を抱いた人々が赴くもの。
　そこにビデオカメラを片手に、ただ目新しいＡＶを撮るためだけに戦場に行く若者がいるのか・・・まぁ、日本は平和だねぇ、と言う事なのかも知れませんが・・・
　それにしても、ＡＶ製作に賭ける製作者の熱意と言うか勢いと言うか・・・とにかく、凄いものだ、と言う印象を受けました。

［戻る］