「獣たちの夜」
押井守
（２０００年　富士見書房）

　映画「ＢＬＯＯＤ　〜THE LAST VANPIRE」を元にした、押井守の小説です。

　もっとも、物語の方は「ＢＬＯＯＤ」の小説化というより、外伝的なものになります。
　・・・1969年、「７０年安保闘争」に参加していた高校生活動家が、偶然、小夜が吸血鬼を「狩る」現場に出会し、そして事件に巻き込まれていく・・・と言うもの。

　しかし、これ、「ＢＬＯＯＤ」の設定を借りて、押井守が好きな事を書いただけに思えるんですけど。(^^;
　冒頭のデモの描写に始まって、吸血鬼伝説を生んだ死体処理の歴史についての蘊蓄（それを、焼き肉屋で、主人公たちに焼き肉を頬張らせながら展開する、と言う悪趣味）・・・クライマックスは、３体の吸血鬼と小夜の対決ではなく、その前の、延々７０ページに及ぶ人類の進化についての蘊蓄合戦です。

　押井守得意の、ひたすら喋りまくる登場人物たち、その過剰なまでの情報の奔流の中から、やがて「真実」が浮かび上がってくる・・・と言う意味での、謎解きはそれなりに面白かったのですが・・・これを、映画同様、アクションものと捉えたら、これは完全に失敗。

　まぁ、ある意味、非常に押井守らしい、と言えばそうなのですが・・・私的には楽しめたので、よしとしたい所だけど、やっぱりこれはウケないよなぁ。(^^;

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