「グッドラック　　戦闘妖精・雪風」
神林長平
（1999　早川書房）

　あの「戦闘妖精　雪風」から１５年・・・

　・・・近未来、南極の時空の裂け目から侵入して来た未知の敵「ジャム」。
　その「ジャム」を追って辿り着いた、惑星フェアリイでの人類とジャムの戦いを描くＳＦメカニックアクション小説の傑作「戦闘妖精　雪風」の、待望の続編が刊行されました。

　さて。
　前作「戦闘妖精　雪風」は、一応、主人公・深井零中尉と、その上官・ブッカー少佐と言う主要登場人物はいるものの、それぞれ独立したエピソードを集めた連作短編集的な内容だったのですが、本作は、連続した物語となって、緊張感が高まっています。
　その分、前作のような世界観の広がりが感じられなかったのが残念ですが、まぁ、フェアリイ世界は前作で紹介し、本作は、人間とジャムの関係に焦点を絞る、と言うことで、これもまたありでしょう。

　今回の物語では、前作のラストで、雪風から放り出された深井中尉が救出され、雪風のパーソナリティを受け継ぐ新戦闘機”メイヴ”と共に戦う事になります。
　その中で、新キャラである精神分析医のフォス大尉が登場し、プロファイリングによって、ジャムを解析しようとする、それが新しい展開になっています。

　今回、印象深かったのは、深井零と、戦闘機・雪風の関係です。
　深井零は、他の人間との関わり合いを避け、他人がどうなろうが、
　「それがどうした。おれには関係ない」
　で済ませる人間として描かれています。
　彼が関心を持つのは、己の乗機、雪風だけ。
　彼と雪風は、太い絆で繋がれているのです。
　だから、雪風は単なる兵器ではなく、仕事上の相棒を越え、もっと深く信頼し合える存在・・・でも、友人ではなく、恋人でもない。
　彼は確信しています。
　「そうすることが最善の判断ならば、おれは躊躇い無く雪風を捨てるし、逆の立場になれば雪風もおれを捨てるだろう」
　相手を、自分自身のように感じ、生き残りの為なら、その自分の一部を犠牲にする事を厭わない・・・それをお互いに確信している関係・・・フォス大尉は、それを「愛」だと分析しました。

　そうか、「愛」ってのはそう言うものなんだ。

　そう言われれば納得してしまいそうになるけれど・・・「愛」とはこんなにも深いものなのか、と、ちょっと感銘を受けてしまいました。

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