劇場版　　　　　　　　　
それでも　
　　　　俺は、
　妻としたい

　これは、「百円の恋」など多くの映画・ドラマの脚本を手掛けた足立紳の自伝的小説を原作にしたテレビドラマ「それでも俺は、妻としたい」に未公開シーンを加えて再編集した劇場版となります。
　出演は「先生の白い嘘」の風間俊介、「愛にイナズマ」のＭＥＧＵＭＩ。脚本・監督は原作者の足立紳。

　柳田豪太、４２歳。売れない脚本家で、昨年の収入は１０万円にもならず、脚本を売り込みながら、妻のチカに養われているのが現状だ。
　浮気する勇気もなければ、風俗に行く金もない豪太が性欲を処理するには、妻とするしかないのだが、妻のチカはそんな豪太をとことん罵倒。“したい”夫と“したくない”妻、夜の営みを巡る攻防の結末は……

　この映画、足立紳監督の自伝的映画であり、これはつまり「喜劇・愛妻物語」の続き、と言うか拡大再生産と言うか……実際、やってる事が基本的に変わらないのです。
　ただ、「妻としたい」に照準を絞った内容は悪くないし、“売れない脚本家”の日常を、実体験に基づいて描いているのも面白くはあります――そこに、流行りの「ジェンダー問題」を盛り込めればよかったように思うのですが、それはさすがに望み過ぎ、か。

　妻役のＭＥＧＵＭＩにはさすがに文句なし。グラビアアイドルとして活躍した肉体は健在で、これならば豪太でなくとも「したい」のはよく判ります。そして、ずけずけと夫に文句、と言うか延々と「クズ」、「気持ち悪い」、「そのツラを見せるな」と罵りまくるのが様になっています。
　一方、夫役の風間俊介は、この役にはいい男、と言うか愛嬌があり過ぎる……これなら、「ペットとして飼ってもいい」と思う女性は少なくないでしょう――その点では「喜劇　愛妻物語」の濱田学と水川あさみの夫婦の方がハマっていたし、そのキャストでやってもよかったのでは、と思いました。

　物語は、豪太の中途半端な覚悟で、チカをあらためて失望させてしまい、その後の、チカの路上での大爆発に繋がるのですが、これもまた既視感あり、と言うより「喜劇・愛妻物語」でもやっている展開。劇場版ならば、それで奮起した豪太のその後があるとよかったように思いますが……それは、この映画を撮っている足立紳の現在があるからよい、と言う事なのでしょうか？
　

　（２０２５年　５月　１日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本・原作

足立紳

　■出演

　柳田豪太　・・・　風間俊介
　柳田チカ　・・・　ＭＥＧＵＭＩ
　柳田太郎　・・・　嶋田鉄太

（その他のキャスト）
　吉本実憂　　熊谷真実　　近藤芳正

　■コピー

この夫婦、最高にして最低

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