白雪姫

　これは、１９３７年、ディズニーによる世界初のカラー長編アニメーション映画「白雪姫」を実写映画化したもの。
　出演は「ウエスト・サイド・ストーリー」のレイチェル・ゼグラー、「ワンダーウーマン」のガル・ガドット。
　監督は「アメイジング・スパイダーマン」のマーク・ウェブ。

　平和な王国を乗っ取った邪悪な女王に命を狙われる白雪姫は、森の奥に逃れ、七人の小人らに助けられる。
　女王は、追っ手を放って白雪姫を追い、住処を突き止めると、老婆に姿を変え、白雪姫の毒リンゴを渡して……

　この映画ですが、原作では「白い雪のような（肌）」と描かれる白雪姫を、ラテン系（ポーランドとコロンビアのハーフ）のレイチェル・ゼグラーが演じている事、更に、彼女が白雪姫に批判的なコメントをした事で非難が殺到、映画も大きなバッシングを受ける事になりました――勿論、これには、米・トランプ政権による反ＤＥＩ政策の影響もあると思いますが……
　また、「原作へのリスペクトが足りない。改変は許されない」と憤る人は、ディズニーの「白雪姫」が原作のグリム童話を大きく改変している事をどう考えているのでしょうか？
　そして、日本でも、そうしたムーブメントに乗っての事か、否定的な評が高まり、封切り週の日曜午後と言うのに、劇場はガラガラと言ってもいい状況でした。

　そんな映画ですが、出来は勿論悪くありません。ディズニーらしく当然ミュージカル仕立てで、今回は「ハイ・ホー」と「口笛吹いて」の２曲以外は全部新曲に置き換えられてアップデートされていますし、レイチェル・ゼグラーの歌唱力、パフォーマンスも見事なもの。
　物語の方も、２１世紀のディズニー映画らしく、多様性に配慮し、尚且つ、プリンセスを受動的な存在――王子様と恋に落ち、助けられて危機を克服する――ではなく、自ら先王の後継者として、王国を奪還しよう、とするものになるのです。
　その結果、“白馬の王子様”は登場せず（それ故、名曲「いつか王子様が」も削られました）、白雪姫の生い立ちや処遇も改変されました。
　レイチェル・ゼグラーの批判的なコメントも、そうした物語を受けての事でしょうし、また、“王子様”を待つプリンセスなど近年のディズニー映画には出て来ない、と言うのも明らかなのに、オリジナルアニメからの改変を許さず、批判もダメ、と言うのはいささか料簡が狭過ぎるように思えます。

　また、米国での酷評は、内容にもよるのではないでしょうか？――本作では、「力こそ正義」と主張するイスラエル人のガル・ガドット演じる王女を、パレスチナ支持を公言するレイチェル・ゼグラーの白雪姫が正論で打ち負かすのですが、これは確かに痛快なものではあると思うのですが、保守的なアメリカ人には容認出来るものではないようにも思えます。
　勿論、本作はトランプ以前のディズニーが生み出したものであり、トランプ政権下でＤＥＩ方針を撤回したディズニーに、今後このような映画を作れるとは思えません。映画本来の価値からは離れてしまいますが、そんな変曲点に置かれた１本、と言う意味からも、本作は今こそ観る意味があるのではないか、とも思います。
　

　（２０２５年　３月２３日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

マーク・ウェブ

　■出演

　白雪姫　・・・　レイチェル・ゼグラー
　
　悪の女王　・・・　ガル・ガドット

（その他のキャスト）
　アンドリュー・バーナップ　　アンス・カビア

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