これは、ピーター・ブラウンによる童話「野生のロボット」シリーズをドリームワークス・アニメーションがアニメ映画化したもの。
　監督・脚本は、「ヒックとドラゴン」シリーズのクリス・サンダース。
　声の出演は、「クワイエット・プレイス：DAY 1」のルピタ・ニョンゴ、「グラディエーターII　英雄を呼ぶ声」のペドロ・パスカル、「ビートルジュース ビートルジュース」のキャサリン・オハラ。

　最新型アシスト・ロボットを搭載した輸送機が大嵐に遭遇して墜落、ロボットの１機・ロズは奇跡的に大自然に覆われた無人島に流れ着き、起動する。
　都市生活に合わせてプログラミングされたロズは、野生の島の動物たちと様々な問題を起こすが、やがて、動物たちの行動や言葉を学習し、徐々に島の環境に順応し始める。
　そんなある日、ロズは雁の卵を見つけて保護し、雛を孵す。孵化した雛から「ママ！」と呼ばれたロズは困惑するが、アシスト・ロボットとして雛を無事に成長させる務めを果たそうとして……

　この映画、元は児童文学ながら、内容はなかなか大人向けと思います――特に冒頭、ロズに崖の登り方の手本を見せたカニがカモメに食われるのに始まり、蝶を鳥が食べ、その鳥をヤマネコが襲って生首が飛ぶなど、食物連鎖をしっかり見せているのは好印象で、これだけで超実写版の「ライオン・キング」よりもリアル、と思ってしまいました。
　また、映像の方もドリームワークスらしく凝っていて、ロズがいかにもなＣＧで描かれる一方、自然と動物たちは、水彩画タッチで描かれており、絵画的でありながらも生命感に溢れる見事なもの。そんな筆致で描かれる苔や野草がロズを覆う事で、野生の世界に馴染んで行くのを見せるなど、アニメーションの技法としても見応えがあります。

　物語の方は、ふたつのストーリーラインが並行して走る構成になっています。
　ひとつは、親兄弟を亡くした雁の子、キラリの成長物語で、もうひとつは野生環境に放り込まれたロボットのロズが自身の居場所を見つける物語。何れも、思いもよらぬ境遇に放り出された者が、自身の“生きる場所”を掴み取るものとなります。
　生まれつき翼が短いキラリが、ロズの助けで弱点を克服し、仲間たちに追いつき、その個性を活かして、群れの中でも一目置かれる存在になって行く成長物語は力強く、そんなキラリがロズの元から飛び立つ旅立ちのシーンは美しくも感動的で、これには思わず涙してしまいました。
　その一方、ロズの居場所探しは、ちょっと説得力に欠ける感じがしました――その過程における、厳しい冬を乗り越える為に、動物たちが一時休戦して共にロズの家で冬越えする、と言うのは、社会風刺としてはともかく、冒頭に見せた食物連鎖を無視するような内容で、これには違和感を覚えました。
　（動物たちが一致団結するのは、その後に描かれる山火事への対処だけでもよいのではないでしょうか？）

　そんな感じで、映画前半は文句なし。後半の展開とラストシーンには納得出来ないものが残りましたが、それでもアニメーションの見事さもあって、これは、なかなか見応えのある映画だと思います。
　

　（２０２５年　２月　８日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

クリス・サンダーズ

　■出演

　ロズ　・・・　ルピタ・ニョンゴ

　キラリ　・・・　キット・コナー

　チャッカリ　・・・　ペドロ・パスカル

（その他のキャスト）
　キャサリン・オハラ　　ビル・ナイ　　ステファニー・シュウ　　マット・ベリー
　ヴィング・レイムス　　マーク・ハミル

　■コピー

プログラムを越えて――生きる。

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