ツイスターズ

　これは、「ジュラシック・ワールド」製作陣による、竜巻に立ち向かう人々を描くアクション・サスペンス。
　主演は、「ザリガニの鳴くところ」のデイジー・エドガー＝ジョーンズ。共演に、トップガン マーヴェリック」のグレン・パウエル、「イン・ザ・ハイツ」のアンソニー・ラモス。

　幼い頃から竜巻に夢中だったケイトだが、大学で竜巻を消す研究中に、自身の判断ミスにより研究仲間を失ったのがトラウマとなって竜巻から離れ、現在はニューヨークで気象予報士として働いている。
　そんな彼女を、かつての研究仲間のハビが竜巻の発生と進路を予測する研究事業に誘う。
　一週間だけ、と言う約束で故郷のオクラホマに戻り、ハビと共に竜巻を追うケイトは、そこで昔ながらの“竜巻チェイサー”のタイラーと出会って……

　本作の監督に起用されたのは、「ミナリ」のリー・アイザック・チョン。ちょっと意外な感じもありますが、リー・アイザック・チョンは、韓国系移民２世ですがアーカンソーの農家育ち。アメリカの農業地帯、そして地方文化を肌感覚を知っている強みがあるし、サポートする「ジュラシック・パーク」製作陣の実力もあって、オクラホマの大地と、そこで暴れる竜巻を見事に描いています。
　そんな映画は、パニックものと見せかけて、実はスクリューボールコメディで、ラブロマンス……そして、西部劇でもあります。
　派手好きな田舎者インフルエンサーと思っていたタイラーが、実は知的な好漢と言う意外性を見せるのは正にラブコメの定番設定……ただ、本作をラブロマンスとして見ると、ライバルのハビが端から相手になっていないのが問題なのですが……

主演となるケイトを演じるデイジー・エドガー＝ジョーンズは、清楚で聡明な感じが、「ザリガニの鳴くところ」の“沼の野生児”役には違和感もありましたが、本作ではピタリ、はまり役と言う感じ。タイラーを演じたグレン・パウエルも、持ち味の幅の広さを活かしており、正に期待の次世代スター競演、と言う所でしょうか。

　ディザスタームービーとしても十分以上の迫力のある本作ですが、ちょっと気になるのは、竜巻の描写が余りに繰り返されること。これで、観てる方も最後には描写に慣れてしまう、と言うか飽きてしまうのは難点だと思います。
　また、竜巻を“手懐ける”と言うのは面白い工夫ですが、これももう一工夫欲しい感じ――専門家目線では、本作が見せたやり方は理屈は間違ってはいないものの、竜巻を抑え込むには圧倒的に量が足りず、正に学生の思い付きレベルだとか――ここは映画なのだから、絵空事でも説得力のあるものを見せて欲しかったように思います。

　全体的に、キャストに文句はなく、ＶＦＸや描写は水準以上なのですが、物語設定やドラマの作り込みが今一つ、と言う感じで、初めてブロックバスター作品を手掛ける若手に多い傾向ではありますが、正に、この巨大な映画を、リー・アイザック・チョン監督が“手懐ける”ことが出来ずに終わったように思えてなりません。　
　

　（２０２４年　８月　７日　１０９シネマズ湘南にて）

（作品データ）

　■監督

リー・アイザック・チョン

　■出演

　ケイト・クーパー　・・・　デイジー・エドガー＝ジョーンズ

　タイラー・オーウェンズ　・・・　グレン・パウエル

　ハビ　・・・　アンソニー・ラモス

（その他のキャスト）
　ブライドン・ペレア　　デヴィッド・コレンスウェット　　サーシャ・レイン　　ダリル・マコーマック　　キーナン・シプカ　　ニック・ドダニ　　モーラ・ティアニー

　■コピー

巨竜を、迎え撃て。

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