劇場版　ブルーロック
−ＥＰＩＳＯＤＥ　凪−

　これは、「史上最もイカれたサッカー漫画」の異名を持つ原作・金城宗幸、作画・ノ村優介による漫画「ブルーロック」の、三宮宏太によるスピンオフ作品「ブルーロック-EPISODE 凪-」をアニメ映画化したもの。
　監督はＴＶアニメ版で副監督を務めた石川俊介。

　何をするのも面倒で無気力な高校２年生・凪誠士郎は、Ｗ杯優勝を夢見る同級生・御影玲王にその才能を見出されてサッカーを始める事になる。
　天性の身体能力とトラップ力を武器に、常人には真似出来ないようなプレーを披露する凪を擁するチームは連戦連勝を重ね、やがて日本サッカー連盟の特別強化組織“ブルーロック（青い監獄）”から強化選手として招かれる。そこで待ち受けていたのは、潔世一、蜂楽廻ら、全国から集められた選りすぐりの高校生ストライカー・３００名。ここを勝ち抜いた者は、Ｕ２０日本代表に選ばれる、と言うのだが……

　これは、「スラムダンク」、「ハイキュー」に続く、スポーツ青春映画の第三弾。
　映画となったのは、２８巻にもなる原作漫画本編ではなく、現在、４巻が刊行されているスピンオフ作品の方。本編の主人公・潔世一のライバルとなる、凪誠士郎がサッカーの面白さに目覚め、それにつれて彼をサッカーに引き込んだ親友・御影との関係が変化して行く……と言う物語の展開も、青春映画としては定番で、この着目点はいいと思います。

　しかし、この映画は、前述した２作品に到底及ばない出来だと思います。長いエピソードの中から、印象的な一試合を切り取ってじっくり見せた先の２作品に対し、本作はスピンオフ作品のダイジェストで、終盤は断片的なシーンとエピソードの連続の、殆ど予告編のような内容となっており、予備知識がないこちらには全く流れについていけないものとなっていた。これは、単体の映画としては問題ありで、終盤は殆ど破綻していると言っていいだろう。
　また、スピンオフ故の事なのだが、本編の登場人物には人物・背景描写がしっかりされるのに、本編登場人物は表面的な紹介に留まり、これでは感情移入も難しい――勿論、本編をよく知る人なら問題ないのでしょうけど……

　そんな内容故、これは原作漫画、そしてＴＶ版の本編アニメを観て来た人の為のファンムービーとしては成立するものの、劇場公開される映画としては評価出来るものではないだろうと思います。　
　

　（２０２４年　４月２４日　イオンシネマ座間にて）

（作品データ）

　■監督

石川俊介

　■出演

凪誠士郎　・・・　島崎信長
御影玲王　・・・　内田雄馬

潔世一　・・・　浦和希
蜂楽廻　・・・　海渡翼

（その他のキャスト）
　興津和幸　　小野友樹　　斉藤壮馬　　諏訪部順一　　内山昂輝　　神谷浩史

　■コピー

［戻る］