これは、山川直輝の人気コミック「マイホームヒーロー」を元にした連続ＴＶドラマの完結編となる劇場版。
　出演は、ＴＶ版に続き、佐々木蔵之介、齋藤飛鳥、木村多江が出演。敵役には人気声優の津田健次郎が起用された監督はＴＶ版の監督を務めた青山貴洋。

　娘の彼氏を殺してしまった鳥栖哲雄が、犯罪組織との熾烈な攻防を生き抜いてから７年。娘の零花は警察官となり、念願叶って捜査一課に配属された。
　そんなある日、土砂崩れによって隠された遺体が発見された事で、７年前の事件が再び動き出す。犯罪組織のボス・志野は、７年前に消えた１０億円を奪還すべく、再び哲雄に狙いを定め……

　原作コミック・ＴＶドラマ共未見ですが、この物語、平凡なサラリーマンの主人公が、アマチュア・ミステリー作家として蓄積した犯罪に関する知識を武器に犯罪組織と渡り合う、和製「ブレイキング・バッド」的物語と理解していました。
　映画予告編の、ＴＶシリーズの場面も、ちょっとトボけた感のある主人公が、佐々木蔵之介の個性と相まってなかなか面白そう――と期待して鑑賞に臨んだのですが、これがなかなか辛い出来でした。
　無駄に肝心なことを言うのを引っ張り、最後の最後、追い詰められるまで行動を起こそうとしない主人公に苛々――しかも、犯罪組織が動き出すと同時に、犯罪組織に恨みを抱く者が��ホワイト・ナイト”として現れるなど、ご都合主義的な展開にもがっかりですし、主人公のミステリーマニアぶりも全然活かされないのも物足りません。

　確かに、主人公の殺人隠蔽をドグマに、犯罪組織と警官である娘と言う善悪対立の中に主人公を置く、と言う構成と、そこで生まれるドラマと言うのは見応えのあるものになる可能性はあり、それは原作の力でもあるのでしょう。だが、この映画版はまるでダメだと思います。ご都合主義に走って、細部のリアリティを失い、しかも、感動を誘おうとする、異様に間延びした演出にもうんざりです。
　クライマックス後など、その最たるもの。警官が多数駆け付けた犯行現場で重要参考人が家族と愁嘆場を繰り広げるなど、全く理解出来ず、これには完全に白けてしまいました――しかも、監督はこれを感動のフィナーレと思っているのだから尚更です。

　如何に主人公――ヒーローであったとしても罪は償わなければならないとするいささかビターな決着は、それはそれで悪いものではないと思うのですが……それを、「感動のドラマ」にしようとした映画には疑問を感じざるを得ませんでした。


ＰＳ
　はらの装着していたスマートウォッチは、映画鑑賞中の２時間を「仮眠」と記録していました……それだけ、心も動かされず、ハラハラ・ドキドキするなど肉体的な変動もなかった、と言うのがデータとしても明らかにされた形です。　
　

　（２０２４年　３月１０日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

青山貴洋

　■出演

鳥栖哲雄　・・・　佐々木蔵之介
鳥栖零花　・・・　齋藤飛鳥
鳥栖歌仙　・・・　木村多江
鳥栖明　　 ・・・　石塚錬

志野寛治　・・・　津田健次郎

（その他のキャスト）
　高橋恭平（なにわ男子）　　宮世琉弥　　板倉俊之（インパルス）　　大東駿介　　淵上泰史　　西垣匠　　金子隼也
　立川談春　　神野三鈴　　音尾琢真

　■コピー

容疑者は、お父さん

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