駒田蒸留所へ、ようこそ

　これは、「ＳＨＩＲＯＢＡＫＯ」の、Ｐ．Ａ．ＷＯＲＫＳによる、働く人々描くアニメ「お仕事シリーズ」の第五弾。
　本作は、最近人気のジャパニーズ・クラフトウイスキーを題材に、崖っぷち蒸留所の再起に奮闘する若き女性社長と、彼女を取材する記者の物語となります。

　クラフトウイスキー“わかば”をヒットさせた、酒造業界で話題のブレンダー・駒田琉生は、実家である「駒田蒸留所」の若社長。経営難の蒸留所の立て直しとともに、バラバラになった家族と、災害の影響で製造できなくなった、家族の絆とも呼べるウイスキー「ＫＯＭＡ（独楽）」の復活を目指していた。
　そんなある日、ネットニュース「ニュースバリュージャパン」の記者・��橋光太郎が取材にやってくる。自分のやりたい仕事に出会えず職を転々としてきた彼は、今の仕事にも身が入らず、辞めることを考えていたが……

　Ｐ．Ａ．ＷＯＲＫＳのお仕事シリーズは、綿密な取材に基づく、仕事のリアルを見せるのが特徴となっています。また、本作では、取材の際の現物写真を、イラスト変換して背景美術に使っており、まるで実写のような細部のリアルさがあります――まぁ、ここまでやるならいっそ実写でやれば、と思うくらい……

　物語としては、震災で、設備と原酒を失い、更に、先代社長も亡くした蒸留所のどん底からの復活を、かつて製造していたウィスキーの再生に重ねて描くもので、それに、今時の、何事にも熱くなれない若者が”仕事”に目覚めるのを重ねる、と言う構成も、悪くないものだと思います。
　ただ、残念なのは、光太郎の言動や行動に、社会人としてのリアリティがなく、また、彼の背景が描かれないので、どうにも感情移入がし難い事でしょうか。
　また、ウイスキー製造そのものへの踏み込みが今いち浅く、お仕事映画としては、いささか食い足りない（実は、映画に登場した蒸留所のひとつのモデルでもある白州蒸留所は幾度も見学したことがあります）のと、物語としても、終盤、「ＫＯＭＡ」の復活よりも家族の再生に重きが置かれる展開となり、お仕事、と言うよりも家族の映画になってしまっているのも気になる所です。
　勿論、それはそれで感動的な物語であり、最後にはしっかり泣かされてしまったのですが……　
　

　（２０２４年　１月２５日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

吉原正行

　■出演

駒田琉生　・・・　早見沙織

高橋光太郎　・・・　小野賢章

（その他のキャスト）
　内田真礼　　細谷佳正　　辻親八　　鈴村健一　　堀内賢雄　　井上喜久子　　中村悠

　■コピー

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