これは、アキ・カウリスマキ監督６年ぶりの新作で、昨年のカンヌ国際映画祭では審査員賞に輝いたラブストーリー。
　出演は「TOVE／トーベ」のアルマ・ポウスティ、「アンノウン・ソルジャー　英雄なき戦場」のユッシ・ヴァタネン。

　ヘルシンキのスーパーで働くアンサは理不尽な理由で仕事を失い、ホラッパは酒に溺れながらも、現場仕事を渡り歩いていた。
　ある夜、カラオケバーで出会ったふたりは、互いの名前も知らぬまま惹かれ合う。後日、偶然再会したふたりは、そのままぎこちないデートに至るのだが……

　これは、不器用な中年男女のすれ違いと再会を描くメロドラマ……なのですが、カウリスマキ監督ならではの極端に感情を抑えた演出と、アイロニカルなユーモアが独自の世界を作り上げています――アンサの部屋にテレビはなく、ホラッパは携帯すら持っていない……何時の時代の物語なのだろう？と言う疑問を、ラジオから流れるロシアのウクライナ進攻のニュースが現代に繋げる、と言う感じなのです。

　映画の中に溢れる、不寛容と理不尽さ、そしてラジオが伝える戦争……そんな残酷な“現実”に対抗するのは、愛と思いやりが生み出す人との繋がりなのだ、と言う淡い希望を描く本作は、確かに、時代に求められた１本なのかも知れません。　
　

　（２０２４年　１月　４日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本・製作

アキ・カウリスマキ

　■出演

アンサ　・・・　アルマ・ポウスティ

ホラッパ　・・・　ユッシ・ヴァタネン

（その他のキャスト）
　ヤンネ・フーティアイネン　　ヌップ・コイヴ

　■コピー

愛を、信じる。

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