ファンファーレ

　これは、２０代の女性たちの揺れ動く心情や葛藤をアイドルの世界を通して描いたドラマ。
　監督は、「君は永遠にそいつらより若い」の吉野竜平。

　アイドルグループ・ファンファーレの結成メンバーのひとりで、現リーダーの西尾由奈の卒業コンサートのために呼び出された、ファンファーレの結成メンバーの大石万理花と須藤玲。由奈の希望により卒業曲は、振付を万理花に、衣装デザインを玲に依頼する事になった。
　疎遠気味だった三人は、由奈の卒業を機に再び交流を持つようになる。元リーダーの万理花は、ダンサーを目指すも鳴かず飛ばず。グループのカリスマ的存在だった玲は、イベント衣装会社で、デザイナーを目指しながら足掻いていた――３０歳目前、悩みや葛藤を抱えながら、由奈の門出に奮闘していく２人は……

　この映画、予想外――と言うか、思っていた以上の“悩める若者映画”で、なかなかよかったです。
　もっとも、これは決して青春映画ではなく、アイドルグループから卒業する者と卒業した者の姿を通して、セカンドキャリアについて考えさせられる内容で、これは結構オジサン向けの内容ではないでしょうか？

　ダンスには自信がある、と言う万理花が、卒業曲の振り付けに対し、後輩から、
　「それもう古いです。３年前ならカッコよかったと思うんですけど」
　と言われて愕然とし、更に、実力が露わになる事を恐れ、最近ではオーディションを受けにさえ行ってない現実を突きつけられるなど、なかなか身につまされる部分がある、と思います。

　また、実際に同世代の女の子たちが演じるので、拙さはあれど、等身大のリアリティがあるのも好印象。
　惜しいのは、低予算故、名の知れた俳優を使えていない事で、この映画を５年前に、前田敦子、高橋みなみ、小嶋陽菜のキャストで映画にしていたら、コレはスゴいインパクトがあったように思うのですが。
　

　（２０２３年１１月２６日　Ｋｉｎｏシネマみなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

吉野竜平

　■出演

大石万理花　・・・　水上京香
須藤玲　 　・・・　野元空
西尾由奈　・・・　喜多乃愛

（その他のキャスト）
　橋口果林　　松崎未夢　　白井美海　　外原寧々　　松浦慎一郎　　土居志央梨　　中島歩

　■コピー

私たち、もうアイドルじゃない――。

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