これは、“圧倒的完成度を誇る名作”として、海外でも広く出版された鳥山明の隠れた人気コミックをアニメーション映画化したもの。

　砂漠の世界“サンドランド”――その国では、王族が水を独占して高額で販売、莫大な利益を得ていた。
　水不足にあえぐ市民の声に、砂漠の町の保安官・ラオは、王国の南に水源である“幻の泉”がある、と推測、魔族に協力を求める。
　そして、ラオは、悪魔の王子・ベルゼブブと、魔物のシーフと共に、“幻の泉”を探す旅に出るのだが……

　今や鳥山明と言えば「ドラゴンボール」ですが、鳥山明と言えば、その独特の丸っこく愛嬌がありながらも、リアリティを兼ね備えたメカニック描写に特色と魅力があります。
　本作は、そんな鳥山明のメカアクションを存分に楽しめる痛快アクションとなっています。
　特に、主役メカとも言える戦車は、ペンギンをモチーフとしたデザインの秀逸さもさることながら、その内部構造からディティールまできっちり作り込まれているのには、素晴らしいの一言に尽きます。
　
　元々、少年誌に連載されていた、と言う事もあって、物語としてはシンプルなロードムービーなのですが、その絵柄と、登場するメカ、そしてキャラクターの魅力がそれを補い、これは本当に面白いです。
　ただ、元々、鳥山明が、ＳＦマンガとして定番の「メカと美少女」ではなく、「メカと老人」を描きたい、と言う話故仕方ない部分があるのですが、女っ気と、ロマンスの要素がほぼ皆無――まぁ、これでボーイ・ミーツ・ガールにすると、宮崎アニメになってしまうので、そこも鳥山明ならではなのだ、と思うしかありませんが……

　何れにせよ、原作コミックが“名作”と謳われるに恥じない内容で、面白さは文句なし。これは傑作です。
　

　（２０２３年　８月２０日　にて）

（作品データ）

　■監督

横嶋俊久

　■出演

ベルゼブブ　・・・　田村睦心

ラオ　・・・　山路和弘

シーフ　・・・　チョー

（その他のキャスト）
　鶴岡聡　　飛田展男　　大塚明夫　　杉田智和

　■コピー

悪魔よりワルだなんて
ゆるされるとおもうか？

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