エドワード・ヤンの
恋愛時代

　これは、台湾ニューウェーブの旗手として期待されながらも、２００７年に逝去したエドワード・ヤン監督による１９９４年の映画。
　TFAI（台湾国家映画及び視聴文化センター）の文化事業として４Ｋ修復され、あらためての劇場公開となりました。

　広告代理店の若き女性社長のモーリーは、私生活でも事業でも行き詰まっていた。そんなモーリーの親友のチチは、会社でもモーリーのアシスタントとして彼女を支えていた。
　モーリーの婚約者のアキンは、裕福でモーリーの広告代理店にも出資しているが、無能で、公私共にコンサルタントのラリーに頼りっきり。
　チチの恋人のミンは役所勤めで、モーリーに公私共に振り回されるチチを気遣い、転職を勧めるが……

　これは、１９９４年、外貨準備高で日本を抜くなど、空前の好況に沸く台湾を舞台に、そんな豊かな暮らしを享受する若者たちが、人生の転機を迎える３日間を描いた群像劇。
　映画としては、まるで、バブル期の日本で作られたトレンディドラマのような内容で、それこそ、「男女七人夏物語」の台湾版とでも言うようなものなのですが、そこはエドワード・ヤンだけあって、単なるトレンディドラマの焼き直しでは収まりません。
　この映画の原題は「獨立時代」であり、これには、未だに続く中国本国からの台湾独立だけではなく、現代の台湾に生きる若者らが、欧米文化を受入れる中で、台湾、いや中国人としてのアイデンティティの独立を問う、と言う意味も含まれているように思います。

　勿論、様々な想いやすれ違いが濃密に描かれるメロドラマとしても一級だし、コメディ要素も多く、恋愛群像劇としても面白く観られます。
　ただ、前述したような奥行きのあるテーマに、まるで実験映画のように挑戦的なカットや演出もあり、これは、見応えのある映画だと思います。
　

　（２０２３年　８月１９日　Ｋｉｎｏシネマ横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

エドワード・ヤン

　■出演

　チチ　・・・　チェン・シァンチー

　モーリー　・・・　ニー・シューチュン

　明（ミン）　・・・　ワン・ウェイミン

　阿欽（アキン）　・・・　ワン・ポーセン

　ラリー　・・・　ダニー・ドン

（その他のキャスト）
　ワン・イエミン　　イエン・ホンヤー　　チェン・イーウェン　　リチー・リー　　チェン・リーメイ　　シュイ・ミン
　ヨー・メイユン　　エイレン・チン　　チン・スーチェ

　■コピー

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