これは、映画監督、クエンティン・タランティーノと彼の映画について、タランティーノ作品の常連俳優らが語るドキュメンタリー。
　
　紹介される映画は、監督第1作目「レザボア・ドッグス」から8作目となる「ヘイトフル・エイト」まで、出演俳優やスタッフが、タランティーノの逸話と秘話をタブーなしで明かしていく。

　この映画に登場する俳優は、クリストフ・ヴァルツ、マイケル・マドセン、ティム・ロス、サミュエル・L・ジャクソンにダイアン・クルーガーとそうそうたる顔ぶれ――ただし、タランティーノ本人は登場しませんが……それでも、これだけの面々が、タランティーノ作品の製作秘話を語り、彼の映画愛と、最高に楽しい現場を語るのです。そこで語られるエピソードや撮影秘話のあれこれ、こられは確かに興味深いものですし、映画好きには堪らない魅力があるのも事実。また、タランティーノの映画人生を判り易く整理したものとなっているのは、資料性としても高いものがあります。

　ただ、タランティーノと彼の映画について、ほぼ誉めるばかりで、批判的な内容が殆どないのは、プロモーション映像ならともかく、ドキュメンタリーとしては疑問を感じる部分ですし、映画作品としても、一本調子に感じられてしまいました。
　それに加え、問題なのは、ハーヴェイ・ワインスタインとの関係――タランティーノがワインスタインと２５年に及ぶ親交があり、ワインスタインのした事をタランティーノが知らなかった筈はない、と言う事――確かに、ワインスタインが告発された後、タランティーノは関係を絶つ、と明言してるし、それは映画でも紹介されていますが――「キル・ビル」製作時に、ユマ・サーマンにスタントを用意せずにカーアクションを撮影する事を強要、結果として彼女に後遺症の残る怪我をさせたのに、ワインスタインは保険金を出し渋り、本件についてタランティーノも沈黙し、この映画でも触れられていません。
　（そのせいか、ユマ・サーマンは本作のインタビューには応じていません）
　こうした陰の部分に、触れてはいるものの深入りをせず、賛辞だけでまとめてしまった辺りに、今となっては物足りなさを覚えてしまいました。
　

　（２０２３年　８月１７日　Ｋｉｎｏシネマみなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

タラ・ウッド

　■出演

ゾーイ・ベル　　ブルース・ダーン　　ロバート・フォスター　　ジェイミー・フォックス　　サミュエル・Ｌ・ジャクソン　　ジェニファー・ジェイソン・リー
ダイアン・クルーガー　　ルーシー・リュー　　マイケル・マドセン　　　イーライ・ロス　　ティム・ロス　　　カート・ラッセル　　　クリストフ・ヴァルツ

　■コピー

タランティーノという
唯一無二のジャンル。

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