シンデレラ
３つの願い

　これは、一風変わったシンデレラの物語で、チェコの作家によるメルヘンを原作に１９７３年に製作された東ドイツとチェコスロバキア合作映画「シンデレラ／魔法の木の実」を、ノルウェーの歌手アストリッドS主演でリメイクしたものとなっています。

　父の影響で、弓や乗馬が得意で野山を駆け回る事が好きな娘シンデレラは、継母に嫌われ、納屋で下働きの毎日。それでも、隙を見て、馬で森に出かけたシンデレラは、ひとりの男性と出会う。彼こそは、王家の伝統に縛られたくない王子だった。
　王子の花嫁を見つけるための舞踏会が近づく中、シンデレラは願い事を叶えてくれる不思議な木の実を３つ手に入れて……

　この映画が描く、王子以上に「男らしい」シンデレラ像は、いかにもジェンダー・ニュートラル先進国のノルウェ−らしい改変、と思っていたら、これが、１９７３年の映画のリメイクと知っていささか驚きました……もっとも、このくらいの改変は最早驚くには当たらない、と言う事か、とあらためて納得すると共に、２０１５年のディズニー実写版の「シンデレラ」が古い価値観のままだった事に今更ながら考えさせられてしまいました。

　ノルウェー映画、と言う事で、「シンデレラ」と言うよりは「雪の女王」の舞台がなるのが相応しい、一面の銀世界と言うのも目新しく、その雪原を、白馬に乗ったシンデレラが駈けて行くシーンには爽快感があります。
　また、シンデレラが叶える３つの願いと言うのが「猟師になること」、「舞踏会のお姫様になること」に加え、最後が「自分自身であること」と言うのも現代的なアップデートでしょう。
　あと、シンデレラで気になるのが、一目惚れで結婚まで決めたのに、肝心の惚れた女の顔も思い出せない、と言う王子のぼんくらぶりなのですが、本作では、舞踏会の前に出逢いを重ねて、心通わせた上で舞踏会での決意となり、最後も再会したシンデレラを前に、「こんなもの要らない」と靴を放り捨てるなど、こちらもアップデートされているのも見逃せない所です。

　決して映画大国ではないノルウェー映画故に、予算やＶＦＸでの制約もあったであろうに、それでも結構頑張って作り込んでいる印象。
　まだまだ出来る事は残っているようにも思いますが、現代版としてアップデートされたシンデレラとはこのようなもの、として観ました。
　

　（２０２３年　７月１７日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

セシリエ・Ａ・モリス

　■出演

シンデレラ　・・・　アストリッドS

王子　・・・　センジス・アル

（その他のキャスト）
　エレン・ドリット・ピーターセン

　■コピー

彼女が望んだのは、午前０時に解けない魔法

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