インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

　これは、スティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカスがタッグを組み、主人公をハリソン・フォードが演じた大人気アドベンチャーロマンシリーズ「インディ・ジョーンズ」の最新作で、最終作。
　インディを、撮影当時７９歳になるハリソン・フォードが演じた事が驚きを以て報じられました。本作のヒロインのヘレナを、「００７／ノー・タイム・トゥ・ダイ」では脚本を手掛けたと言う、才あるフィービー・ウォーラー＝ブリッジが演じ、更にマッツ・ミケルセン、アントニオ・バンデラスら、豪華なキャストが脇を固めます。

　１９６９年。考古学者であり大学で歴史の教鞭を執るインディアナ・ジョーンズも７０歳を迎え、リタイヤする事となった。
　息子をベトナム戦争で亡くし、妻のマリオンとも別居中で、すっかり、孤独で偏屈な老人となったインディの元へ、旧友の娘のヘレナが訪ねてくる。
　彼女が探しているのは“人類の歴史を変える力”を持つと言う、アルキメデスが残した謎のダイヤル。この秘宝を巡り、因縁の宿敵、元ナチスの科学者フォラーと全世界を股にかけた争奪戦を繰り広げる事に……

　「インディ・ジョーンズ」シリーズと言えば、私自身、シリーズ第一作の「レイダース　〜失われた聖櫃<アーク>」を、映画鑑賞生涯ベスト１０に入れる、と思う程のお気に入りで、あればこそシリーズ最新作となれば、見逃す訳にはいきません――それにしても、まるでハリ−・ポッターのようなタイトルはどうにかならないのか、とは思いますが。

　ただ、この映画、監督がスピルバーグではなく、「フォードｖｓフェラーリ」などで知られるジェームズ・マンゴールドが務めています……確かに、才能あるいい監督ですし、本シリーズや、スピルバーグをリスペクトしているのも判るし、あれこれ工夫もしてるのだけど、どうにもテンポが悪い――プロローグの１９４５年のエピソードだけでも３０分近くあるのですから、これは勘弁してほしい。（結果として１４０分もあります）――スピルバーグなら、プロローグのアアクションは勢いで見せて１５分、全部で１２０分以内にまとめた内容だと思うのですが……
　また、ジェームズ・マンゴールド、スピルバーグと比べては酷なのですが、アクションシーンがどうにも面白みに欠け、冗長なイメージ……しかも、真面目過ぎるせいか、いささかユーモアのセンスに欠け、どうにも笑いがないのも辛いです。そして、何よりも印象が悪いのが、人が無駄に死に過ぎる感じで、シリーズの持っていた軽妙なアクションムービーの色合いが薄れてしまったのが残念です。
　物語的にも、考証含め、作り込みに雑な部分が目立りますし、ヘレナの性格付けと、ダイヤルを追う動機がどうにも不明瞭――ロマンスにはならないとは言え、それでも本作では紅一点のヒロインなのです。彼女にどうにも感情移入出来ないのはちょっと苦しいように思います。
　また、終盤の展開で、あの場に居合わせたインディが、「自分はここに残る」と言うのは駄目でしょう……不屈の考古学者、インディ・ジョーンズであればこそ、あれを目に焼き付けたのならば、語り継がずにいられなくなる筈……それを、弱音を吐いた挙げ句に、ヘレナにぶん殴られた挙げ句に襟首掴まれて連れ戻されるなど、こんなインディの姿は見たくなかったのですが……

　それでも確かに「インディ・ジョーンズ」らしい追走劇とサスペンスの連打に加え、終盤にはあっと驚く展開も見せるなど、なかなか見せ場の多い映画ではありましたし、最後のマリオンとのシーンには思わず涙してしまったのですが、あれこれ引っかかる場面が多過ぎて、折角の最終作を存分には楽しめなかったのが残念です。
　

　（２０２３年　７月　３日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

ジェームズ・マンゴールド

　■出演

インディアナ・ジョーンズ　・・・　ハリソン・フォード

ヘレナ　・・・　フィービー・ウォーラー＝ブリッジ

ユルゲン・フォラー　・・・　マッツ・ミケルセン

（その他のキャスト）
　アントニオ・バンデラス　　ジョン・リス＝デイヴィス　　トビー・ジョーンズ　　ボイド・ホルブルック　　イーサン・イシドール

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