６５
シクスティ・ファイブ

　これは、アダム・ドライバー主演のＳＦサバイバル・スリラー。
　監督・脚本は「クワイエット・プレイス」の脚本・原案を担当したスコット・ベック&ブライアン・ウッズのコンビとなります。

　宇宙探査ミッションで宇宙船の航行を担当するミルズだが、航行中、隕石群に遭遇し、宇宙船が大破、未知の惑星に墜落してしまう。宇宙船はバラバラになり、探査クルーも殆どが死亡。クルーの娘である少女・コアのみが生存していたが、言葉が通じない。ミルズは、離れた地点に落下した脱出船を探し出し、惑星から脱出しようとする。
　そんな二人が不時着したのは、６５００万年前の地球……そして、恐竜を絶滅させる事になる巨大隕石が、間もなく地球に衝突しようとしていた……

　この映画、恐竜時代の終焉を告げる大カタストロフである、白亜紀末の隕石衝突をサスペンスとして描こう、と言うもので、これはなかなか面白い着眼点だと思います。
　その隕石衝突をクライマックスに、地球からの脱出をタイムサスペンスにすると言う物語も悪くないのですが、出来上がった映画としては、何ともすっきりしない、首を傾げさせられるものとなってしまっているのです。
　娘を亡くしたミルズ、そして、墜落事故で両親を亡くしたコア（彼女は終盤までそれを知らさせない）、と言う二重の喪失に、ふたりのディスコミュニケーションを描く……と言う設定は、いささか余計なものと思えましたし、まるでクリーチャーのように執拗にミルズとコアを襲う恐竜たちの描写も不自然極まりないものとなっています。
　ここはアイデアを活かして、物語はもっとシンプルに、恐竜時代末期の恐竜たちの世界を描き、その終焉の目撃者となる……と言うだけも充分だったのでは？と思ってしまいました。

　正にあれこれ余分なものを突っ込んで、収拾なつかなくなってしまった典型で、“捨てる勇気”を持てないＢ級映画そのもの、と言う感じ。アダム・ドライバー主演と言う事で、劇場公開されましたが、ここはむしろアダム・ドライバーに出演作をちゃんと吟味して欲しい、と思ってしまったくらいです。　
　

　（２０２３年　５月２８日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

スコット・ベック　　ブライアン・ウッズ

　■出演

ミルズ　・・・　アダム・ドライバー

コア　　・・・　アリアナ・グリーンブラット

（その他のキャスト）
　クロエ・コールマン

　■コピー

地球にいたら、命はない

［戻る］