ガール・ピクチャー

　これは、サンダンス映画祭ワールドシネマドラマ部門観客賞を受賞したフィンランドの青春映画。第９５回アカデミー賞国際長編映画賞部門のフィンランド代表作品にもなっています。

　同じ高校に通う、クールでシニカルなミンミと、キュートなロンコは放課後も、ショッピングモールのジューススタンドで共にバイトをする親友同士。
　最初の金曜。ロンコは、男性にときめかず、セックスしてイケるのかどうかが不安。そもそも恋愛がよく判らない――そんな自分が、みんなと違うのではないかと悩み、果敢にパーティーへと繰り出す。そんなロンコにくっついてパーティーにやって来たミンミは、大事な試合を前にプレッシャーに押し潰されそうなフィギュアスケーターのエマと出会う。
　次の金曜、ミンミはエマと一夜を過ごし、ロンコは女友達とプレイボーイと言われるシビの家に行って……

　これは、自分の心と身体と性の成長に戸惑いながら、自分が何者であるかを思い知らさせて行く３人の少女の物語で、いささか変わっているとは言え、これは立派な青春映画だと思います。
　ミンミは、遅い反抗期で、感情を素直に表現出来ない、心と行動のアンビバレンツに戸惑い、ロンコは、性衝動と恋愛感情がない自分が、みんなと違う事に悩み、エマは、成熟しつつある身体が今までのようにジャンプを跳ばせてくれなくなっているのに苦しんでいます。
　映画は、そんな３人の少女の悪戦苦闘を描いて行くのですが、この映画、描写と展開が、映画の中心にいる情緒不安定なミンミに寄り添うかのように、定石をとことん外して来るの困惑しました。
　ロンコがセックスを試そうとする男たちは、みんな優しくていいヤツで、ロンコに男性とセックスを嫌悪させるような事はしないし、試合のプレッシャーから逃避するようにミンミとの関係にのめり込むエマに、ミンミが愛情から距離を取る、と言う事もしない――清酒映画の定番展開を敢えて外して来るのに、当初困惑したのですが、要するに、この映画は、ありがちな定番ドラマを描こうとはしていない、と言う事か、と理解――確かに、ドラマのような展開は、なかなか現実には起きないし、若者は右往左往し四苦八苦しながら成長するもので、決して一発で正しい選択を出来るものでもありません。
　これもまた青春なのだし、最後、１歩ではなく、ほんの半歩かもしれないけど、それでも前に進み始めた３人の少女の見せる笑顔に幸せな気持ちになれる１本です。
　

　（２０２３年　５月　４日　恵比寿ガーデンシネマにて）

（作品データ）

　■監督

アッリ・ハーバサロ

　■出演

ミンミ　・・・　アーム・ミロノフ

ロンコ　・・・　エレオノーラ・カウハネン

エマ　・・・　リンネア・レイノ

（その他のキャスト）
　ソニヤ・リンドフォルス　　セシル・オルブリン　　オーナ・アイロ　　ラッコ・カウピラ　　アモス・ブロテルス　　
　ブルーノ・ベア　　ニッキー・ラーグイド

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どんなあなたも、愛してる。

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