劇場版ＴＯＫＹＯ　ＭＥＲ
走る緊急救命室

　これは、オペ室を搭載した大型車両で事故や災害の現場に駆け付ける医療チームの活躍を描いたTVドラマの劇場版。
　監督は、ドラマ版と同じく松木彩。主演は、鈴木亮平。

　東京都直轄の医療チームＴＯＫＹＯ−ＭＥＲを、全国展開すべく、厚労省は、まずは横浜にＹＯＫＯＨＡＭＡ−ＭＥＲを設立。こちらは、厚労省直轄組織となる。
　そんな折、横浜・ランドマークタワーで大規模火災が発生、地上７０階の展望フロアに１９３名が取り残されてしまう。火炎による上昇気流と黒煙でヘリコプターが近づけない。ＴＯＫＹＯ−ＭＥＲも応援に出動、現場を統括する厚労省の指揮下に入る。
　直後、ランドマークタワーの展望フロアにＴＯＫＹＯ　ＭＥＲのチーフドクター・喜多見の妻で妊娠中の千晶もいることが判明。喜多見は現場突入を主張するが、「医師は危険を冒すべきではない」と言う厚労省の方針と衝突し……

　この映画ですが、確かにリアリティのある面白い内容です。大量のガソリンを使った人為的火災と言うのは、京都アニメーションの事件を参考にしたものと思いますが、確かに防災設備もしっかりした現在の建造物で大規模火災を引き起こすにはあれしかないだろうし、高層ビルならば窓が解放出来ないので逃げ場がありません。実際、シナリオ構築に当たっては横浜消防局の協力も得たそうで、シチュエイションとしてはよく考えられていると思います――まぁ、横浜ランドマークタワーと三菱地所がこの設定でよく協力したものとは思いましたが……

　その一方、いただけないのは、演出のしつこさとくどさ。終盤、喜多見と千晶が上層階に取り残されるのですが、この２人が助からない訳がないので、ここで延々危機的状況を引っ張るのは無意味だとしか思えず、いい加減、うんざりさせられました。盛り上げるのは、ドラマの方でちゃんとやって欲しいものです。
　また、「ひとりも死なせない」ために現場での医療行為をも辞さないＭＥＲの理念は理解出来るとしても、やはり、医師が消防隊の前に現場突入するのは、さすがに行き過ぎで、疑問を覚えざるを得ません……主人公と対立する意見の「医師は危険を冒すべきではない」と言う方に説得力を感じてしまいました。　
　

　（２０２３年　５月　１日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

松木彩

　■出演

喜多見幸太　・・・　鈴木亮平

（その他のキャスト）
　賀来賢人　　中条あやみ　　要潤　　小手伸也　　佐野勇斗　　ジェシー（SixTONES）　　フォンチー　　菜々緒
　杏　　徳重聡　　古川雄大　　渡辺真起子　　橋本さとし　　鶴見辰吾　　仲里依紗　　石田ゆり子

　■コピー

必ず、守る。

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