空気殺人
ＴＯＸＩＣ

　これは、韓国で多くの被害者が出た加湿器殺菌剤事件を基にした社会派法的劇。
　監督は、「君に泳げ！」のチョ・ヨンソン。主演は「死体が消えた夜」のキム・サンギョン。

　大学病院で救急救命室の医師をしているテフンの息子、ミヌが肺の病に倒れ、意識を失って救急搬送される。その直後、妻も同じ肺病で突然他界――悲嘆に暮れながらも、医師として、その経緯に疑問を抱いたテフンは、検事である義妹のヨンジュと共に、独自に調査を進め、加湿器用の殺菌剤に原因があると突き止める。
　殺菌剤はメーカーである世界的企業のオーツー社のヒット商品だったが、オーツー社は自社製品に、重大な肺疾患を引き起こす有害な化学物質が含まれていることを隠して１７年にもわたり販売してきたのだった……

　この映画、韓国最大の薬害事件（そして、現在も係争中）を、ここまでの社会派サスペンス、そしてエンターテイメントにしてしまうのですから、韓国映画と言うのはやはり凄い、と思います。先日公開された、類似内容の法廷劇の邦画「イチケイのカラス」などとは、正に次元の違うものとなっているのには嘆息するばかり。

　強大な敵、隠された悪事、絶対不可能と思われた裁判をどうやってひっくり返すのか――終盤にあっと驚くドンデン返しを見せる逆転劇にも唸らされます――現実の事件を元に、ここまでエンターテイメントにしてしまうのか、と。
　そして、そこから現在に繋げ、事件が未だ係争中と言う所で、現実に着地させる力技。逆転劇は痛快ではあるけれど、決して後味のいいものでもなく、無理も感じはするけれど、これは見事な法廷劇であり、社会派映画でありながら、しっかりエンターテイメントとなっています……これは見応えのある映画です。
　

　（２０２３年　２月２６日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

チョ・ヨンソン

　■出演

テフン　・・・　キム・サンギョン

（その他のキャスト）
　イ・ソンビン　　ユン・ギョンホ　　ソ・ヨンヒ　　キム・ハオン

　■コピー

捏造された情報　死者多数事件
真実なのか　物語なのか

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