少女は卒業しない

　これは、「桐島、部活やめるってよ」の朝井リョウの同名連作短編小説を映画化したもの。
　監督・脚本は、短編映画「カランコエの花」が話題を呼んだ中川駿。
　主演は、意外な事に本作が初主演となる河合優実。他に、小野莉奈、小宮山莉渚、中井友望、藤原季節ら、旬の若手俳優が出演しています。

　廃校が決まり、校舎の取り壊しを目前に控えたとある地方高校……その“最後の卒業式”までの２日間。別れの匂いに満ちた校舎で、世界のすべてだった、この場所にに別れを告げようとする4人の少女。それぞれが秘めた想いを形にしていく……

　これは、４人の少女を主人公に、恋愛絡みのエピソードを卒業式までの２日に押し込んだ、誰もが切なさを感じ、郷愁を覚える物語……さすがは、朝井リョウと言う感じです。映画としても「桐島、部活やめるってよ」の再来、と、あで言うと誉め過ぎかも知れませんが。
　これが長篇第１作となる中川駿監督ですが、４つのエピソードが平行で走る、と言う構成を、なかなか巧みな語り口で形にしていると思いました。
　卒業と言う、「終わる」物語に、何かが「変わる」のを描き、そんな２日間の物語の中に、回想シーンをシームレスに使い、ちょっと驚くような仕掛けで涙を誘う辺りも巧みです。
　
　強いて難点を挙げると、４つのエピソードの繋がりが希薄で、”卒業”に向けて収斂していく感じがない事と、その事実上のクライマックスとなる佐藤緋美のアカペラにもうひとつ説得力が感じられなかった事……ここを、有無を言わせない歌唱力で盛り上げる事が出来たら、より感動的だったとは思うのですが……

　それでも、今や若手再注目の河合優実を始め、キャストはみな魅力的だし、はしゃぎ過ぎない演出も好印象。これはいい映画だと思います。　
　

　（２０２３年　２月２５日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

中川駿

　■出演

山城まなみ　・・・　河合優実
後藤由貴　・・・　小野莉奈
神田杏子　・・・　小宮山莉渚
作田詩織　・・・　中井友望

（その他のキャスト）
　窪塚愛流　　佐藤緋美　　宇佐卓真　　藤原季節

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あの頃、ここが世界のすべてだった

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