「恋愛適齢期」

　月曜の定時日、早めに会社上がって、ＷＭＣ海老名で「恋愛適齢期」を観て来ました。

　これは、ラブコメの名手、ナンシー・メイヤーズが、ジャック・ニコルソンとダイアン・キートンと言うベテラン俳優を起用して製作した、異色のラブ・コメディ。

　幾つもの会社を経営する実業家、ハリーは、６０歳を過ぎても未だ独身のプレイボーイ。
　お相手は常に２０代の美女ばかりだ。
　休暇を、今のガールフレンド、マリンの母親で劇作家のエリカの別荘で過ごそうとするが、そこで、不在のはずのエリカと鉢合わせ。
　せっかくのバカンス気分も気まずい雰囲気になってしまう。
　それでも、その夜をマリンと過ごそうとしたハリーだが、何と心臓発作を起こして病院にかつぎ込まれることに・・・

　ジャック・ニコルソン、６６歳。ダイアン・キートン、５８歳。
　この２人の熟年俳優を使って、ラブ・コメディを撮る、と言う企画にまず脱帽。
　しかも、これが「枯れた」感じがせず、若々しくと言うか、ちょっと変なのだけど、この２人が「初々しく」感じられてしまうのは、これまた凄い。

　中心のカップル２人が、それぞれ、この歳まで真剣な恋愛を避け、傷つかない代わりに本当の恋を知らない、と言う設定によって、熟年２人が「初恋」に戸惑うシチュエイションを生み出し、それを演出の妙と、それにベテラン俳優の名演技によって、納得させる。
　その巧みなテクニックによって、この２人をしてラブコメを立派に成り立たせてしまう、これは、さすが、ラブコメの名手、ナンシー・メイヤーズの本領発揮と言う所でしょう。

　この脚本、映画中盤までは、なかなかの出来を感じさせます。
　洒落た台詞回しに、小気味よい場面転換、俳優の名演技を引き出して、登場人物を魅力的に描くのも好印象です。

　また、笑える部分が多いのもこの映画の特徴。
　高齢をネタとするのが多いのだけど、そんな部分も嫌みでなく気持ちよく笑えます。
　ハリーが、「初恋」の胸の痛み、「嫉妬」の胸がつぶれるような苦しみに戸惑い、心臓発作と誤解して、その度に病院に行くと言うシチュエイションコメディは傑作。
　また、老眼鏡が恋のアイテムとなると言う、ギャグすれすれの、誰も思いつかないようなアイデアもさすがです。
　
　ジャック・ニコルソンとダイアン・キートンの演技はさすがに上手く、他の出演者を圧倒します。
　今回の恋敵役は、キアヌ・リーブスだけど、主演２人に比べると大根役者ぶりが目立って・・・と言うか、貫禄不足が明白。
　この役が、ジョージ・クルーニーあたりだと、もっと面白くなったような気がします。

　残念なのは、終盤の展開がちょっと呆気なくも甘口に過ぎること。
　この辺り、大人のラブコメらしく、甘い中にも、ちょいと苦みを入れた方がよかったような感じです。

　（４月１２日　ＷＭＣ海老名にて）

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