耳をすませば

　これは、柊あおいが「りぼん」で連載していた同題の少女まんがを実写映画化……と言うか、これは、スタジオジブリによるアニメ映画版を実写映画化したものでしょう。
　出演は清野菜名と松坂桃李のＷ主演。中学生時代の二人には安原琉那と中川翼。監督は「ツナグ」や「約束のネバーランド」の平川雄一朗。

　１９８８年、読書が大好きな中学生の月島雫が、チェロ奏者になりたいと言う夢を抱く少年、天沢聖司に出会い、ふたりは朝日に向かい結婚の約束をする――それから１０年、児童書の編集者となった雫は、変わらず物語を書き続けていたが、未だ認められず、人生に悩み、思い余って、イタリアでチェロ奏者として活動する天沢聖司に会いに行くが……

　この映画、アニメ映画版の実写化リメイク……ではあるのですが、設定は大きく改変。天沢聖司が取り組んでいるのは、バイオリンではなくチェロで、しかも作る方ではなく弾く方。それに「カントリーロード」も出て来ない――中学時代のエピソードは、ビジュアルだけでなく、場面や展開など、かなり忠実にアニメ版を再現しているのですが……

　映画の中心は、１０年後の２人が織り成すオリジナルストーリーが中心となります。まぁ、確かに、２人の中学生時代を演じる安原琉那と中川翼を、あの演出で２時間持たせるのは辛いし、映画興行的にも厳しいと見たのでしょうか……
　その新たな物語は、なかなか見せるものもあるのですが、中身が中学生から成長していないのでは？と思わせる、雫のぐだぐだっぷりにはうんざりする事も……あと、残念なのは、現在の観客と物語を繋げる要素が弱い事……中学時代を、原作まんがや、アニメ映画から、１９８８年としたのはやむを得ない部分はあるとしても、これが２１世紀の現代の映画である以上、現在の観客に繋げる工夫は必要でしょう。
　むしろ、オリジナルパートを現在とし、あれから３０年後、雫と聖司の子供による新たな「耳をすませば」にしてもよかったようにも思います。

　あと、２５歳の天沢を演じるには、松坂桃李はちょっと年嵩に感じる一方で、より違和感を覚えたのは、清野菜名の方。撮影は２年以上前だから、ほぼ役年齢と同じ筈なのに、老けてるなぁ、と思ってしまいました。　
　

　（２０２２年　１０月１４日　Ｔ−ＪＯＹ横浜にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

平川雄一朗

　■出演

月島雫（２５歳）　・・・　清野菜名
月島雫（１４歳）　・・・　安原琉那

天沢聖司（２５歳）　・・・　松坂桃李
天沢聖司（１４歳）　・・・　中川翼

（その他のキャスト）
　山田裕貴　　内田理央　　荒木飛羽　　住友沙来　　音尾琢真　　松本まりか
　中田圭祐　　小林隆　　森口瑤子　　田中圭　　近藤正臣

　■コピー

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