ＳＯＮＧＢＩＲＤ
ソングバード

　これは、「トランスフォーマー」シリーズのマイケル・ベイプロデュースによるパンデミック・スリラー。

　２０２４年、致死率の高い新型コロナウイルスＣＯＶＩＤ−２３が蔓延するロサンゼルス。
　ロサンゼルスだけでも年間死者数は８００万人を越え、長期のロックダウンにより街も人々の心も荒廃。ウイルスに対する免疫を保有する少数の者のみに自由行動が認められ、社会インフラを支える仕事に就いていた。
　そんな免疫保有者で、配達員のニコは、Ｑゾーンと呼ばれる施設に徹底隔離されそうになる恋人サラを救い出そうと荒廃した街を奔走する――

　この映画、アメリカで公開されたのはコロナ禍の最中の２０２０年。恐らく、新型コロナウィルスのパンデミックにより企画・製作されたものでしょう。
　新型コロナウィルスのパンデミックが如何なる事態を引き起こすのか、未知の恐怖を想像で補っている部分があり、その後の現実とは差異もあります。しかし、都市ロックダウンと外出規制により人気の消えた大通りなど、その後、現実に目の当たりにしたものと同様の光景を見せられると、これは、現実の延長線上にあるのだ、と感じさせられるのも確か。

　物語の軸はメロドラマで、コロナ禍で触れ合う事の出来ない恋人たちを描きます――そんな恋人たちを引き裂こうとするのがウィルスではなく人間だ、と言うのはある意味で卓見でしょう。
　未知のウィルスによるパンデミックの最中にあっても、一致団結して事態の解決に当たるのではなく、金や権力を求めるのが人間なのだ、と言うシニカルな視点――そして、それは同時に、お互いの事しか考えていない恋人たちもまた同様であるのですが……

　倒すべき敵をウィルスではなく、人間として終わらせたのは、ドラマを矮小化させた感もあります。
　ただ、これは、コロナ禍の先が見通せない中での企画だっただけに、アフターコロナを描くには至らなかった、と言う事なのかもしれません。　
　

　（２０２２年　１０月１２日　ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

アダム・メイソン

　■出演

　ニコ　・・・　ＫＪ・アバ
　　
　サラ　・・・　ソフィア・カーソン

（その他のキャスト）
　クレイグ・ロビンソン　　ブラッドリー・ウィットフォード　　ピーター・ストーメア　　アレクサンドラ・ダダリオ　　ポール・ウォルター・ハウザー　　デミ・ムーア

　■コピー

これは、近未来への警告

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