ＬＯＶＥ
ＬＩＦＥ

　これは、矢野顕子の同題曲から着想した深田晃司監督による人間ドラマ。主演は「ファブル」の木村文乃と、「峠　最後のサムライ」の永山絢斗。
　ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門出品作です。

　役所の福祉課に勤める妙子は、再婚して、夫の二郎と、妙子の連れ子となる息子・敬太と集合住宅に暮らしている。向かいの棟には二郎の両親。
　結婚１年後、敬太の６歳の祝いの席上で悲劇は起こった。突然の死と、息子の葬儀――葬儀の式場には、離婚以来姿をくらませていた妙子の前の夫が現れて、妙子を殴りつけて叱責するのだった……
　この悲劇をきっかけに、平穏に見えた妙子の暮らしは大きく揺らいで……

　この映画、登場人物のほぼ全員が、酷い振舞いをします――敬太の誕生会で、義理の母は「今度、本当の孫を抱かせてね」と言い、義理の父は「中古の嫁などありえないだろ」と吐き捨てる。
　その席に呼ばれた夫の元カノは「あんな女、滅茶苦茶になればいい」と願い、その願いが通じて敬太が死ぬと、夫は「次はオレの子作って貰おう」と思い、葬儀の席に現れた妙子の元夫は、「お前の子供が死んで前の妻との子供の事を思い出した。会いに行きたいから金を貸せ」と金をせびる――妙子と敬太の事は誰ひとり考えていない……とは言え、人間なんてのはこんなもの。人間関係を保つ外面の裏面には、誰しもがこんな思いを抱えているに違いない、と言う、鋭い視線が心をえぐるヒューマンドラマとなっています。
　そんな内容からも、この映画、タイトルとしては「オセロ」が妥当ではないでしょうか？――「ＬＯＶＥ　ＬＩＦＥ」から生まれたとは思えない内容なおです。（深田監督自身もそれは意識しているようですが）

　映画が描き出す、入り組んだ人間関係が生み出す負のコミュニケーションと、ディスコミュニケーション。それを重ねて描き出す、家族、いや、人と人の繋がり……それを「ＬＯＶＥ」と言っていいものなのか……
　いろいろと考えさせられる余白のある映画で、いかにも深田晃司らしい作品です。面白いか、と問われるとそれは判断が分かれると思いますが……　
　

　（２０２２年　９月１５日　ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

深田晃司

　■出演

　大沢妙子　・・・　木村文乃

　大沢二郎　・・・　永山絢斗

　パク・シンジ　・・・　砂田アトム

（その他のキャスト）
　山崎紘菜　　神野三鈴　　田口トモロヲ　　嶋田鉄太　　三戸なつめ　　福永朱梨　　森崎ウィン

　■コピー

痛かった、全部。

［戻る］