バイオレンスアクション

　これは、浅井蓮次と沢田新による同名人気コミックを、橋本環奈主演で実写化したもの。
　監督は「極主夫道　ザ・シネマ」の瑠東東一郎。

　日商簿記検定2級合格を目指し専門学校に通っている菊野ケイ。学校の後で向かったバイト先は、指名制の殺し屋で、ケイは、指名ナンバーワンの凄腕の殺し屋であった。
　その日の依頼は、ヤクザ組織の若頭・木下からの依頼。ケイは言われるままに、ヤクザの組事務所を訪れ、あっと言う間に組員を皆殺しにしてしまう――それから、ケイは、ヤクザの跡目争いに巻き込まれて……

　映画鑑賞後に、原作コミックを購読――なるほど、これはなかなか巧く映画化したもの、と思いました。映画のストーリーはほぼオリジナルですが、それでも原作のエピソードを組み合わせて、映画の尺に合わせて再構築しています。キャラクターの実写化もかなりハマっていて、特筆すべきはやはり橋本環奈。原作でも印象的だったゴツくて強面の男が揃う鉄火場で、小さくてかわいい女の子がいる、と言う違和感を見事に現実のものとしています。橋本環奈は、舞台女優としての経験も積んでおり、身体表現の方もなかなかのものです。

　だが、感心したのはここまで。オリジナルのストーリーは薄っぺらく、佐藤二朗演じるヤクザ組長のギャグも全然笑えません――全く笑えず、それを自ら「オヤジギャグ」と言い訳させられる佐藤二朗が気の毒に思えた程です。
　また、クライマックスのアクションを見せる場面設定が滅茶苦茶――廃工場に始まり、廃ホテルを経て、操車場、石切場を経てダムへ辿り着く、と言うのがどう言う場所なのか、全く説得力がありません――ただ、ロケした場所を繋げただけ、と言うヤッツケ仕事ぶりには呆れるしかありません。
　そして、肝心のアクションですが、橋本環奈は飛んだり跳ねたり、かなりのアクションを頑張ってはいます、だが、やはり格闘のリアリズムはなく、何とか格好にしようとした、早回しや特殊撮影などの加工が安っぽくて白けます――橋本環奈がそこまで出来ず、スタントダブルの起用も困難、と言う事があるとしたら、そこはガンアクション主体にするなど、アレンジの仕様はあったように思います。
　キャストや特殊効果など、予算は潤沢と思えるのに、同様のガールズアクションを、はるかに低予算で見せた「ベイビーわるきゅーれ」に及ばない仕上がりとなってしまう辺り、やはり映画はセンスだなぁ、と思わされました。 　
　

　（２０２２年　８月２４日　イオンシネマ海老名にて）

（作品データ）

　■監督

瑠東東一郎

　■出演

　菊野ケイ　・・・　橋本環奈

　木下　・・・　高橋克典

　みちたかくん　・・・　城田優

　ヅラさん　・・・　岡村隆史

（その他のキャスト）
　杉野遥亮　　鈴鹿央士　　馬場ふみか　　森崎ウィン　　大東駿介　　太田夢莉　　猪塚健太　　箭内夢菜　　兵動大樹
　くっきー！　　佐藤二朗

　■コピー

この殺し屋、
バイトのくせに超無敵

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